IOCと価値観が相反する
五輪の参加国・地域数はW杯の5倍以上になる。加えて会長がトランプ氏のシンパであるFIFAと違い、国際オリンピック委員会(IOC)は多くの面でトランプ政権と対立することが予想される。トランプ氏に翻弄されるのは必至だ。
五輪で米国がドーピングを推奨するわけではないだろうが、トランプ政権とIOCが価値観を共有していないのは、エンハンスト・ゲームズのデスーザ氏らの言動からも明らかだ。IOCを欧州の貴族的エリートがリードする国際機構と位置付ければ、反エリート・アメリカファーストというMAGA運動の敵としてぴったりである。さらにそこには開催都市契約によって権利関係の収益を独占してきたIOCに対し、より良いディールを求める米国という対立も出てくるだろう。IOCがトランプ氏に翻弄されるのは必至だ。
米タウソン大学のロバート・スローカ准教授(スポーツマネジメント)によると、IOCは不平等な開催都市契約で批判されるが、契約変更を認めないFIFAと違って交渉が可能で、実際にロサンゼルスは東京などよりも有利な特約を得ているという。開催の主体は都市であり国でないのが五輪の建前だが、今後更に有利な条件を得るためにトランプ氏が動くことも予想される。
スポーツも分断の材料
スポーツとトランプ氏について考えるとき、スポーツの利用の方法が従来の権力者と全く違うことを頭に置かなくてはならない。
権力者はスポーツが人々を引き付け、統合する力を重視してきた。例えばナチ政権下で開かれた1936年のベルリン五輪では、反ヒトラーの急先鋒だったニューヨーク・タイムズ紙が「ドイツは国際社会に復帰を果たした」「(五輪が)ドイツ人を再び人間らしくした」と大会について好意的に報じたことを米ホロコースト記念博物館が紹介している。スポーツを使ったプロパガンダにそれだけの効果があるのである。