“ペレ”と呼ばれた理由とは
政治家としてのスポーツ界への対処を語るには、トランプ氏自身の特異なスポーツ観を知る必要がある。ゴルフ場を数多く所有し、故安倍晋三氏ら著名人とのゴルフ交流で知られるトランプ氏のプレーぶりについては、スポーツライターのリック・ライリー氏の著書に詳しい。
自分のボールをこっそりフェアウェーへ蹴り戻し、他者のボールはラフへ蹴り出すことから、キャディに陰で(伝説的サッカー選手にちなんで)「ペレ」と呼ばれている。高速でカートを飛ばしていち早くグリーンに達し、チップインを装う。こういった逸話が列挙されている。
テレビ局FOXのゴルフ解説者ブラッド・ファクソン氏は、タイガー・ウッズを交えてトランプ氏とプレーしたことがある。あるホールでウッズが3打目を沈めて「大統領はどうですか」と声を掛けると、1人でグリーン下にいたトランプ氏は「4打目だ」と即答した。7打目だと数えて知っていたファクソン氏は、込み上げる笑いを止められなかったという。
ゴルフはプレーヤーが不正をしないという前提に立ち、審判員がつかない。作家のP・G・ウッドハウスは「人の本性を知りたければ、一緒にゴルフをするといい」と言った。トランプ氏のプレーぶりの背景には、自伝などで繰り返し紹介される父フレッド氏の「勝って、勝って、勝ちまくれ。とにかく勝て」という信条があるとライリー氏は指摘する。
競技スポーツのルールはギャンブルと結びついて英国で形成された。勝敗が偏れば賭けにならない。つまりルールは勝ち続けないように設計されているのである。だから「とにかく勝て」を実践するなら、ルール外でプレーするしかない。その分かりやすい例が、敗戦を認めず選挙不正を主張して暴動の発端になった2020年の大統領選だろう。トランプ氏の考えはスポーツの本質と相いれないのである。
五輪が何を強いられるのか。ロサンゼルス2028が歴史に残る特殊な大会になるのは間違いない。
