私の人生は駆け出し人生
私は、きっと、人よりも好奇心が強いのでしょうか。興味を持つと、それをこの目でみて、確かめたい。是非とも、自分の体験の中に組み込みたい、という思いが人一倍激しいようです。
そのものに向かって突進する。駆け出す。あとさきのことなど考えない。そのさまは、我ながら、あっぱれとほめてあげたいくらい、さっそうとしたものだったのですよ。
そんな私はある時期「駆け出しお千代」と言われたものです。うまい言い方だなア、と思いませんか。この呼び名が私は気に入って、そうだ、ほんとうに私は「駆け出しお千代」だと自分でも思ったものです。私が「駆け出しお千代」であったおかげで、私は、たくさんの経験を積むことができたのです。面白い経験をたくさんすることができたのです。
私の人生のすべては、この「駆け出しお千代」のもたらしたものなのですね。
私は思いを心の中に秘めて、あれこれと考えていることができないのです。大抵の思いや考えることというものは、時間がたつとだんだんうすめられて、しまいには、やらなくてもいいや、と思えるものです。
前にも言いましたが、行動が伴わなければそれはないことと同じなのですね。私の人生は「駆け出し人生」なのです。ひたすら前に向けて駆ける人生でした。
好きな人ができると、突進します
「駆け出しお千代」さんは、好きな人ができると、突進します。その人の目をみて、「私はあなたが好きです」と心情を告げます。この行動力が私の人生にいくつもの恋のあとを刻みました。
また、あるときは、雑誌社に送った小説の通知がいつまでも来ないので確かめるために、ただそれだけのために札幌から汽車に乗りました。この行動力が私の小説家への道をひらいたのですね。
誰でもそうですが、駆け出した先には、必ず新しい出会いが待っているのですね。よく私は若い人たちにね、どんなことでもしないでいるよりも、たとえ、失敗しても、ダメになっても、体験してごらんなさい、と言うのですが、これが成功のための法則なのですね。
失敗したら、反省すればいいのです。人間というものは体験することによって、必ず、一握りのものをつかんで、立ち上がるのです。それが積極的に生きるということなのです。(後略)
本作紹介
『私の幸福論 宇野千代人生座談』宇野千代
4度の離婚、2度の破産、3度の大病。それでも、自分を一度も不幸な人間だと思わなかった宇野千代。95歳の本人が、自らの体験をもとに、幸福、仕事、おしゃれ、恋愛と結婚、行動、人間関係、暮らし、故郷、長寿まで、10カ条に分けて語る人生座談。解説・黒柳徹子。
