57年ぶりとなる「夏の甲子園」出場を果たした秋田県立横手高校。地元が甲子園出場校を支える様子はまさに「街ぐるみ」だった。一方で、学校側には大きな苦労もあったという。今年7月、徳島県立池田高校の蔦文也監督を描いた『監督、神になる 池田高校 記憶の衝突』(文藝春秋)を上梓した田中仰氏が取材した。
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私立と何が違うのか?
歓声が渦巻くアルプス席で応援の様子を心配そうに見つめる男性がいた。横手高の地理・歴史科教諭で応援団責任者を務める阿部政任(51)だ。「久々の出場で喜びはひとしおですか」とわたしが話しかけると、阿部は言った。「出場が決まったときは、おっしゃるとおり嬉しかったです。ただ、正直なことを申し上げますと大変……いやあの寄付金集めがですね、うちにはノウハウがなかったものですから」
爽やかな甲子園の裏側で、出場校は金策に奔走している。とくに公立校は私立校と比べて資金力に乏しい。ほとんどの公立校野球部で部費は私立の半額以下、学校から部に割り当てられる予算も限られている。野球設備の充実度も遠征の回数も、私立に遠く及ばない。甲子園出場にともなう経費の寄付金集めにおいても、公立校は教諭や同窓生の総力戦が求められる。教諭の異動があるため、ノウハウも蓄積しづらい。
たとえば昨夏、甲子園に出場した佐賀県立佐賀北高校が出場経費をクラウドファンディングで募ったことがニュースになった。2007年夏に甲子園を制した佐賀北でさえ金策に苦労する事実は、驚きをもって伝えられた。昨夏ベスト4に進出した岐阜県立岐阜商業高校も大々的に寄付を募っていた。ならば57年ぶりに出場する横手高は──。
応援団責任者の阿部にハレの場でカネの話を訊くのは気が咎めたため、日を改めた。試合から3日後、再び取材することができた。
阿部は今夏、現地応援の管理、応援席のチケット購入・分配などを担当した。現場の状況をこう話す。
