「全校生徒約600人のうち約470人が現地で応援しました。生徒たちも楽しんでいましたが、次は飛行機がいい、なんて言ってましたね」
生徒と教諭は試合前日の15時に横手を発ち、翌朝に甲子園へ到着した。横手高が手配したバスは計17台。地元企業も現地応援ツアーを組んでいたため、台数の確保は綱渡りだった。
準備に忙殺された3週間だった。横手高の甲子園出場が決まったのは7月21日。3日も経たずして、野球部OB会、同窓会「美入野(みいりの)会」、PTAなどから構成される協議会が立ち上げられた。野球部は表敬訪問やメディア対応に追われ、学校関係者は種々様々な手配に奔走した。
甲子園開幕前の8月2日、阿部は甲子園へ向かった。出場校に割り当てられる試合日のチケットを購入するためだった。そこで上限の2500枚を購入し、格安航空で横手へ帰り、再び準備に戻った。
「本校の職員と生徒分に600枚、同窓会に600枚、現地で配布する用、市のツアー用……といった具合に振り分けました。同窓生に甲子園現地でチケットを手渡しする場合、球場近くに指定された場所があり、高野連(日本高等学校野球連盟)からそのための許可証を受け取る必要があります。その場所で配布できる枚数にも上限がありました。その数では足りないので、近くのホテルをチケット配布場所に指定しました。配布するホテルの場所代に、応援グッズの保管代もかかりました」
ほどなく出発当日を迎え、0泊3日の弾丸ツアーに出た。
「高野連の決まりで、生徒が乗るバスには1台あたり2名、大人の同乗者が必要でした。そのうち1人が責任者になり、責任者の電話番号を17台分、高野連に提出する義務もありました。各バスに大人2人となれば、校長、教頭、教諭だけでは足りないので、学校の用務員さん、事務職員さんにも協力していただいて。なんとか乗り切りましたね」
金足農業高から資料を譲り受け……
まさに総力戦だった。だが、移動の労苦よりも、阿部を戸惑わせたものがある。部員の現地滞在費や応援生徒の移動費のための金策である。
半世紀ぶりの甲子園出場とあって、寄付の集め方がわからない。そこで横手高の副校長が、同じ秋田の公立で野球強豪校の金足農業高の知人から、実際にかかる費用、資金集めの方法などが記された資料を譲り受けた。導き出された目標額は5000万円。協議会が寄付金集めを主導し、同窓会とPTAが地元企業へ挨拶に回り、全国の同窓生約1万7000人に寄付の振込用紙を郵送した。先述した横手市による1000万円の補助、地元企業の大口寄付、同窓生の寄付によって、集まった総額は目標額を上回り、7000万円を超えたという。
※約7500字の全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア『文藝春秋PLUS』と『文藝春秋』2026年10月号に掲載されています(田中仰「公立高校の甲子園 書かれざるカネと夢」)。
・池田高・蔦監督の場合
・快進撃で集まった1億5000万
