公園西側の入り口にあるトイレに向かった吉展ちゃんは、借金を重ね生活に行き詰まっていた小原に現金を得るための誘拐目的で南千住方面へと連れ去られ、その日のうちに円通寺という寺の墓場で殺害された。

 公園のすぐ横には、吉展ちゃんの両親が未だ暮らしているのだろうか、吉展ちゃんの姓が書かれた表札が掛けられているビルがあった。

 もし両親がこのビルに暮らしているとしたら、事件から半世紀以上、毎日のように公園から響いてくる子どもたちの声を耳にし続け、きっと吉展ちゃんのことを思い浮かべ続けているに違いない。何とも残酷な日常であろうか。

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「マスコミにはいい思いをしなかったねぇ」

 入谷南公園から車で5分ほどの場所にある円通寺へと向かった。遺体の発見された墓地の裏にある民家では、ひとりの女性が事件当時のことを話してくれた。

写真はイメージ ©getty

「すごい人だったねぇ。遺体が発見された時には、墓地が閉鎖されていて、私の家の2階から取材陣が写真を撮ったり、ビデオを回したりしたんだよ。土足で家の中に入ってきたり、電話を使われたりして、マスコミにはいい思いをしなかったねぇ。NHKだけだね、あとからハンカチを送ってきたのは。それ以外はそれっきりだよ」

 寺の墓地へと足を運ぶと、墓石の群れの中に小さな地蔵が置かれていた。寺の僧侶の説明によれば、墓石の下にある遺骨の安置場所に遺体が埋められていたのだという。

次の記事に続く 「いい兄貴分だったよ。あの事件さえなければ普通に暮らしていたんだろうな」《吉展ちゃん誘拐殺人事件》事件現場を訪ねてわかった“犯人男性の意外なその後”(昭和38年の事件)