カンチョーをされた選手は成績が上がる?
ところでカンチョーについてまことしやかに囁かれる話としては、「カンチョーをされた選手は刺激を受けて成績が上がる」というものである。たとえば鈴木誠也が覚醒したのは丸佳浩のカンチョーのおかげである、と以前丸本人が語っていた。果たして本当にそうなのだろうか。
今年のオールスターで菊池のカンチョー被害を受けたDeNA・筒香の月間成績で比較してみると、
7月 打率.276 4本塁打 8打点
8月 打率.316 9本塁打 19打点
と、確かにオールスター出場後の8月の成績が上がっているようでもある。しかし昨年の胴上げ時に被害を受けた一岡や磯村の場合、
カンチョー前の一岡(2017年)6勝2敗1S19H 防御率1.85
カンチョー後の一岡(2018年)5勝6敗2S18H 防御率2.88
カンチョー前の磯村(2017年)打率.235 2本塁打 3打点
カンチョー後の磯村(2018年)打率.215 1本塁打 4打点
となり、よしんばカンチョーに効果があったとしても長期持続するものではないということがわかる。
一岡にしろ磯村にしろ、前年の胴上げの経験を踏まえて菊池の動きを十分に警戒していたにもかかわらず、一瞬のスキをついて被害を受けたと後に語っている。菊池がカンチョーの意義について「グラウンドでは気を抜くなという愛のメッセージです」(前掲『週刊ベースボール』)と述べている通りだ。あの胴上げに加わる集団の中から的確にターゲットを見つけ、素早く背後に回り込みカンチョーを実践する。それは菊池の芸術的なセカンド守備のようでもあり、忍者のようでもある。そう思うとカンチョーのポーズも、忍者が精神集中のために結ぶ印のようにも見えてくる。
しかし今後、他の選手は菊池のカンチョーについてどのように対処していくべきなのだろうか。今年の胴上げを見ていても、尻をガードしたり、明らかに周囲を気にして挙動不審になったりする上本崇司らの姿が見られた。胴上げに集中できないのである。菊池に反撃できればそれに越したことはないが、菊池の背後を取るためには菊池以上に俊敏な動きが必要となるため難しい。菊池が背後を取られる時。それは遠い将来菊池が監督となり、優勝した時ぐらいしかないのではないだろうか。
その未来に静かに思いを馳せつつ、まずは今年カープがもう一度胴上げを行えるのか、その胴上げで菊池がどのような動きを見せるのか、注目していきたい。
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