信じるか信じないかはあなた次第
たとえばワーデックスはMJ(マジェスティック)12がモデルだ。MJ12は1947年にトルーマン大統領が結成した秘密組織で、UFOの目撃事件があるとダークスーツの男たちが現れて目撃者の口封じをするという。それをコメディにしたのが映画『メン・イン・ブラック』(97年)だ。
そこからダニエルが持ち出した機密は、1973年2月、当時の大統領リチャード・ニクソンがコメディアンのジャッキー・グリースンをフロリダのホームステッド空軍基地に招待し、冷凍保存された4体のエイリアンの死体を見せる映像。これは、1983年にグリースンの元妻が語った新聞記事に基づいている。
ダニエルはエイリアンの生体解剖ビデオも見せる。これは有名な1947年にニューメキシコ州ロズウェル近郊に墜落したといわれるUFOの乗組員だ。米軍はその残骸は観測気球の破片だと発表したが、実は現場で回収したエイリアンを米軍が隠していると言われ続けた。
ダニエルがマーガレットと初めて接触すると彼の周囲のトウモロコシがなぎ倒されて幾何学模様を作る。これは「クロップ・サークル」(日本ではミステリー・サークル)と呼ばれ、1966年にオーストラリアでUFOの目撃と共に発見されて以来、世界各地で見つかり、異星人の円盤の痕跡といわれる。
また本作にはヒル夫妻事件が基になっていると思しきエピソードも登場する。1961年、バーニーとベティのヒル夫妻がニューハンプシャー州の田舎を運転中に意識を失った。後に催眠療法で、UFOに乗せられた記憶を取り戻し、それを1966年に発表したことで世の注目を浴びた事件だ。
『ディスクロージャー・デイ』という物語そのもののヒントになったのは、AATIP開示事件だろう。2017年12月、ニューヨーク・タイムズ紙は、2007年に米国防総省が設立したAATIP(先進航空宇宙脅威識別計画)というUFO調査の秘密プロジェクトの存在を暴露した。この記事のせいでAATIPはUFOの機密映像を開示することになった。なかでも有名なのは2004年にサンディエゴ沖上空で海軍機が撮影した、TicTacと呼ばれるキャンディのような形の飛行物体である。
そして、ディスクローズされた情報にも登場するエイリアンは、薄い灰色の肌、やせた体と手足に巨大な頭、巨大な眼……それは約50年前に『未知との遭遇』に登場したエイリアンとまったく同じ。「リトル・グレイ」と呼ばれるその姿はヒル夫妻が描いた絵に始まり、それから60年以上もマンガやコントで笑いのネタにされてきた。
『ディスクロージャー・デイ』のネタのほとんどがとっくにデバンク(間違いか嘘だと検証)され済みだ。ロズウェルに落ちたのは観測気球だし、ヒル夫妻の証言は催眠で誘導された偽の記憶で、クロップ・サークルはイタズラで、エイリアン解剖ビデオも捏造だったことを、やった本人たちが自白している。
でも、スピルバーグは信じている。まさに、信じるか信じないかはあなた次第。『ディスクロージャー・デイ』は、実は信仰についての映画だ。ダニエルの恋人ジェーン(イヴ・ヒューソン)が元修道女なのは偶然ではない。


