『週刊文春』で昨年9月にスタートした、みうらじゅんさんの人気連載「アウト老のすすめ」。みうらさんがアウトローな老人、“アウト老”として生きる日々が綴られています。そんなみうらさんが現在、情熱を注いでいるマイブームが、津々浦々に存在する人魚像を探し求める「人魚像ハンティングの旅」。

 今年1月にスタートした「人魚像ハンティング」の第2回を紹介します。

★人魚像ハンティングの旅(1)はこちら

 1月3日(土)

 夏は夏で大変だった野外の人魚像撮影。温暖化など手緩い言葉で片付けられない。いっそのこと“灼熱地獄化”と、すべきではないかと思うのだけど。それに準ずるならば、今回は極寒地獄での人魚像旅。しかし、何も依頼があって新潟県・鵜の浜海岸に来ているのではない。勝手にマイブーム。さぶいぼ出しながら“そこがいいんじゃない!”と、呪文を唱えるしかないのである。潟町の宿で1泊し、本日はJR信越本線で直江津駅に向った。もちろん目当ては人魚像(4体もいる)。でもこの大雪だ。到底、回りきれるとは思えない。駅前から徒歩で15分ほどの所にあるらしい船見公園の人魚像ですら考えものだ。仕方なくタクシーに乗ったが、路地は積りに積った雪。何度か車がスリップし、ヒヤヒヤだったがどうにか近くまで来たらしい。

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「アレなんですけど、そこまで行けますかどうか」

 と、運転手さんが言って車内からは遠い背中しか見えない像を指さした。公園の入口が雪で塞がれていて、目の前の(これはあくまで予想だけど柵のある)脇道を登らなきゃ近寄ることが出来ないという。

「行って来ますのでここで待っていて下さい」

 僕はヒーローみたいなセリフを吐いて車の外に出た。そして、雪の中に足を踏み入れたのだが、ズボッと膝上辺りまできて不安な気持ちになった。こんな時は“不安タスティック!”。呪文を唱えながら必死で先に進んだ。そこはひとっこひとりいない公園。赤色で絵付けした白い蝋燭を両手で持ち、悲し気な表情を浮かべる乙女人魚像が佇んでいた(1)。小川未明さんの童話そのものであった。

1

 すぐに撮影を済まし、己れが踏み抜いた雪の穴を頼りにタクシーへ戻る。そして、「上越市本町5丁目にあるランドビルという所に向って下さい」と、運転手さんに告げた。本当は後、2ヶ所回りたかったが今回は無理。和服を着た珍しい人魚像だけを見に行くことにした。

「ここからだとさらに5000円くらいかかりますけど」