「額が固まり、演技に支障が…」俳優たちの“顔が動かない”問題
さらに、美容整形は俳優にとって大きなリスクになる。前出のキッドマンは、ボトックスによって額が固まり、演技に支障が出たと告白した。近年「顔が動いていない」と指摘される俳優はますます増えている。
SNSで「驚異の名演」と話題になった『BEAST-私のなかの獣-』(2025)の主演クレア・デインズのケースは興味深い。アラフィフの彼女の演技がバズった理由は、多くの視聴者に「皺まで含めて表情が豊かすぎる」と驚かれたからだった。「中高年の若返り」美容が進み、撮影された俳優の顔を整えるAIまで導入されている現在のハリウッドにおいて、活発な表情演技や自然な皺すら珍しくなりつつある。結局、人工的な「自然な若返り」とは、人間らしい加齢ではないのだ。
女性の体型トレンドも一気に細身主義へ
世の中のボディイメージも技術革新で激変した。2010年代のアメリカといえば、ボディポジティブの時代。従来の美の規範から除外されていたさまざまな体型を肯定し、自己受容を祝う価値観が花開き、プラスサイズのタレントが活躍する場も増えていた。いわゆる美形の女性たちのあいだでも、胸やお尻が豊満な曲線ボディが理想とされていた。
しかし、コロナ禍を挟んで潮流が一転。ショートビデオ投稿やオンラインミーティングの普及に従い、自分の顔や身体を細かく見る機会がもたらされたことで容姿を気にする人々が増え、ルッキズム文化に拍車がかかった。
そこに、オゼンピックやマンジャロなど、糖尿病治療のために開発されたGLP-1薬を減量用途で服用するブームが加わる(※日本の厚生労働省は、美容・痩身・ダイエット目的での使用は安全性及び有効性が確認されておらず危険だと勧告)。GLP-1薬ブームの影響もあってか、米国で長らく右肩あがりだった肥満率が3年連続で低下に転じた。こうして、女性の体型トレンドも一気に細身主義へと裏返ったのだ。
女性セレブたちも、新たな細身主義を反映していっている。かつてぽっちゃり体型を誇る楽曲や映画で名を馳せたメーガン・トレイナーやエイミー・シューマーなどのボディポジティブ・アイコンも、GLP-1薬の使用を公表して減量を果たし、少なからず失望を集めた。さらに不安視されているのは、若手から熟年まで、摂食障害を心配されるほどの激痩せが続出してしまっていることだ。
※加速するルッキズムに声を上げ再評価されている有名女優や、AI時代ならではの中高年女優のリバイバルについて書かれた記事全文は、『週刊文春WOMAN 2026秋号』で読むことができます。