「暮らしの中から」社会は変えられる

eri 本当に同じことが日本でも起きていると思います。高市政権が進めた国旗損壊罪などもそうですけど、砂の城を少しずつ崩していくように、私たちの自由と権利を削りとっている。私たちの人権意識が薄い部分に、つけ込まれている。

 主権者は国民なのに「舐められてたまるか」とムカついています。ある意味、今の政権のひどさが、逆に私たちの運動を大きくするためのモチベーションにも繋がっていますね。

ブレイディ eriさんの主導するデモは、私たちが生きている日常や友人関係からあまり飛躍しない、つまり暮らしの延長線上にデモを置いているのが、大きな支持を得ている理由のひとつだと感じています。

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 ご著書の『暮らしの中の小さな革命』は、世の中を変えたり社会問題を考えたりするのは、なにも私たちの日常から乖離したものではなく、「暮らしの中から」できることなんだと再確認させてくれる本でした。

eri 本を書いた背景には、「一人ひとりの個人がもつ力」というものを私たちは過小評価していないか? という思いがありました。選挙でも「私の一票なんて」と思われがちですが、デモをやっていて実感するのは、1がたくさんあることの大切さ。デモに参加する一人ひとりがいることで、国会前を埋め尽くす広大な景色はつくれている。だからこそ、個々の生活の中での気づきや、自分自身の中に起こる変化が重要だと思うんです。

eri氏

 じつは私は、2019年に気候変動の問題を学び始めて、恥ずかしながらそこで、本当に地球環境が危機的な状況でタイムリミットが迫っていることを知ったんですね。「こんな大変な状況の中で、私に何ができるんだろう」と悩み抜いて、そこから自分のライフスタイルを見つめ直していきました。

 日本ではエコとかサステナブルというと、何かを我慢しなきゃいけない、生活の選択肢が狭まる、という窮屈なイメージが強いですが、自分で実践してみたら、全然そんなことはなかった。むしろ、自分が本当は何がほしいのか、本当に便利なものはなにか、どんな色のどんな素材が好きなのか、しっかり考えて選んだものってすごく可愛くて、長持ちするし合理性が高いんですよね。そうやって自分と対峙していると世界の見え方も変わってくる。これって革命じゃないかな、と思ったんです。

 だから一人ひとりの日々の行動こそが小さな革命だし、目指したい社会へと変える大きな革命にも繋がると信じています。

互いに共有する個の力を!

ブレイディ それでいうと、本にも書きましたが、英語のpowerは、同じ単語で、個々がもつ「~の力」(power of)も表すし、他者を支配する権力「~に対する力」(power over)も表します。だとするならば、個々の力がつながり、強まっていけば、やがて「~と共有する力」(power with)になる。互いに共有する個の力で、政治のあり方だってきっと変えていける。

 日本だと、個人の力と権力はまるで別物のように扱われがちですが、本当は地続きの、同じパワーなんですよね。

eri 本当に、一人ひとりのパワーが大事なんだよということを、今後もいろいろな形でシェアしていきたいと思っています。個々の小さな革命が集まって、デモカレンダーの光みたいに、日本列島がわっと光り輝く。小さな川が流れ込んで、やがて大きな海になる。そんなイメージで、私たちのパワーを社会の中で発揮していきたいですね。

 今日は勇気づけられるお話をありがとうございました。

ブレイディ こちらこそ、とても刺激的な時間でした。ありがとうございました。

(代官山蔦屋書店にて)

それはどこでも起こり得る 壊れゆく世界への抵抗

ブレイディ みかこ

文藝春秋

2026年7月15日 発売

最初から記事を読む 左派特有の“キャンセルされちゃう怖さ”が人を萎縮させる? ブレイディみかことアクティビストeriが共鳴した「互いを責めない緩やかさ」