マンガ家、伊藤潤二のブームが、さらに過熱している。九月十九日の「情報7days」では、USJで開催中の伊藤氏の代表作『富江』と“ハロウィーン・ホラー・ナイト”のコラボの盛況が紹介された。
欧米だけでない。ブラジルや台湾から来た『富江』マニアがカメラに熱い想いを語る。伊藤さんは司会席の三谷幸喜を描いたり大サービスだった。
秋ドラマ開始の前に、夏ドラマの振り返りを短く。クォリティと話題性からいえば、『Tシャツが乾くまで』の文句なしの一人勝ちだ。誰もが――とりわけ二十代以上の女性たちが、中島歩の容貌、さらにはその低音に魅了された。
『T乾』が夏ドラの〈表〉を制した勝者なら、テレ東深夜の『ストレンジ 伊藤潤二の夜も眠れぬ奇妙な話』はディープな時間帯に蠢く〈裏〉の個性派だ。
オープニング曲が恰好よい。歌詞にあわせて配された伊藤氏の絵も文句なしで期待は高まるばかり。
第一話『死びとの恋わずらい』が始まる。辻占(つじうら)という奇妙な習俗が残る地方都市で陰惨な事件が次々おきる。バスケ選手ほどある身長の、黒服でピアスをした“四つ辻の美少年”に辻占を頼むと否定的な反応が返り、依頼者は自殺する。
『死びと――』の主人公は霧深い難澄市(なすみし)の高校生、深田龍介。演じる細田佳央太(かなた)は二十四歳。ちょっと制服が似合わないな……。学校の教師や街の通りも、垢抜けない。原作の伊藤潤二の絵には不穏な気配と繊細な美が同居している。
なのにドラマは、というのが第一印象だ。しかし絵とドラマの違いが徐々にわかってきた。マンガはどこかサラッとしているが、実写は生々しい。霧がたちこめた狭い町で、辻占をして、恋は実らないと告げられ、首をカッターナイフで切り自死する女子高生たちの流す大量の血には、抗えない生理的な力がある。
第六話『富夫・赤いハイネック』では女の髪の毛が浮気男の首に巻きつき、深く食いこみ、シャツは血の色で染まり、頭も首から落ちる寸前に。『あばら骨の女』では、痩せたい少女が、あばら骨を切り出す。
役者も味がある。『いじめっ娘』では真木よう子が“怪演”と評されたが、それはラストシーンだけ。そこに至る、彼女のもったりした表情の方が不穏だ。
人が執着する場に固定される『地縛者』は血や怨霊と無縁な“奇妙な味”の佳作だが、円井わんが好演。『ばけばけ』で主人公の幼なじみを演じた女優だ。
私が選ぶ怪演は、子供の心を支配し殺す『父の心』の石原良純だ。高校生の娘を殺そうと念を送る良純を観て悲鳴を小さく上げた。
中島歩の低音もフェロモンたっぷりだが、伊藤潤二の描くキャラも、不穏と美しさで負けていなかった。
『ストレンジ 伊藤潤二の夜も眠れぬ奇妙な話』
テレビ東京 放送終了
https://www.tv-tokyo.co.jp/junjiito_strange/



