4/12ページ目
この記事を1ページ目から読む
「ちょっと速すぎる」
――あれ、少し速いな。普段と同じような運転をしているのに、なぜ速いのだろう。
そして、不安を抱く。
――ちょっと速すぎる。アクセルから足を離しているのに、なぜ速度が落ちないのか。
何かあったときのために足を置いていたブレーキをさらに踏み込んだつもりが、速度は下がるどころか上がった。エンジン音が急上昇する。「車が急加速している!」という危機感がせり上がり、車速はこれ以上速くなればスピンしてしまう限界旋回速度近くに達していた。
急ハンドルに悲鳴を上げる車
何とか左折を果たし、護国寺方面に向かう片側二車線の直線道路に進入する。
飯塚は声を上げる。妻と話す余裕は一切なくなった。前にスズキの二五〇ccのバイクが現れた。咄嗟にハンドルを切って右に車線変更する。ウィンカーを出す余裕は全くない。一旦は難を逃れるが、今度は七〇代の男性が運転するレンタカー(ホンダ「フィット」)が現れ、車間距離が一気に詰まる。
再度、左への車線変更を決断する。さきほどのスズキのバイクを追い越す格好でその前方に飛び出す。追い越したくて追い越したわけではない。車をコントロールできず、追突を避けるために結果的に追い越したのだ。
急ハンドルに車が悲鳴を上げる。タイヤが路面のアスファルトと激しく摩擦を起こし、ドリフト走行の際に発生するスキール音が発生する。
「あぶっ」
