終映後、涙が止まりませんでした
主演のおふたりを支えるキャストのみなさんも、本当にすばらしかったです。一人ひとりがものすごく存在感のある、主役級の方たちばかりで、こんな贅沢なキャスティングでいいのかと思ったくらいです。
北原先生を演じた長谷川博己さんはとくに印象的でした。北原先生は『汝、星のごとく』だけでは全体像がつかみにくい人物です。続編の『星を編む』まで読むと、彼がどういう人生を歩んできた人なのかが見えてくるのですが、本作では、そこをすべて説明するわけにはいかない。役作りがとても大変だったと思います。
劇中の後半で『汝、星のごとく』では明かしていない北原先生の“ある事情”をセリフとして入れたいというご相談が長谷川さんからありました。一度はお断りしたのですが、それでも長谷川さんから「やはり入れたい」という申し出がありました。きっと北原先生を演じるうえで大切なセリフであり、告白だったのだと思います。改めて担当編集者さんと話し合い、長谷川さんの想いを尊重することになりました。演じる方がそこまで考えて役を生きてくださっていることを信じようと思ったんです。
初号試写で完成した映画を観たときは、終映後20分くらい涙が止まりませんでした。早い段階から原作者としてかかわらせていただきましたが、一本の映画として観るのは初めてでしたので、私自身も緊張していたのだと思います。その緊張が解けたこともありましたし、何より本当にいい映画に仕上がっていました。あとから、私の姿を見て藤井監督や横浜さん、広瀬さんもほっとしてくださったと聞きました。
映画をきっかけに初めて『汝、星のごとく』に触れてくださる方もいると思います。映画を観たあとに小説を読んだら櫂は横浜さん、暁海は広瀬さんの顔が浮かんでくるかもしれません。きっとそれでいいのだと思います。なにせ私も最近、仕事で原作を確認しようとページを開いたら、横浜さんと広瀬さんの顔が浮かんできて、「これは困ったな」と思ったから(笑)。『汝、星のごとく』という作品に出会うのは映画が入り口でもいいと思っています。そこから原作までたどり着いてくださったら、原作者としてこんなにうれしいことはありません。
なぎら・ゆう 作家。京都府在住。2007年にデビュー。初期代表作に「美しい彼」シリーズや『おやすみなさい、また明日』など。2019年に『流浪の月』と『わたしの美しい庭』を刊行。2020年『流浪の月』で本屋大賞を受賞。2022年刊行の『汝、星のごとく』は第168回直木賞候補作、第44回吉川英治文学新人賞候補作などに選ばれ、2023年に2度目となる本屋大賞を受賞。2026年『多類婚姻譚』が第175回直木賞候補作に選ばれる。
INTRODUCTION
日本アカデミー賞最優秀主演男優賞&最優秀監督賞をダブル受賞した『正体』(24年)の藤井道人監督が、今村圭佑を撮影監督に迎えて製作。時代に合わせて質感の異なる3つのカメラを使い分け、3章構成で撮影した。「時間はもう巻き戻せない」がテーマの第3章には、一度きりしか撮影できない35㎜フィルムをあえて使用。脚本を「きのう何食べた?」シリーズの脚本家・安達奈緒子が手がけ、恋人たちの15年を圧倒的なリアリティで魅せている。
STORY
美しい海と空が広がる、瀬戸内のとある島に転校してきた男子高校生・櫂(横浜流星)と、この島で育った暁海(広瀬すず)。ともに家庭に恵まれず、わだかまりを抱えるふたりは、互いに唯一の心の支えとなり、恋に落ちる。夢を掴むために上京する櫂と、家族のために島で働く暁海。そんなふたりに、無情にも突き付けられるいくつもの〝岐路〟。「愛する人のために人生を誤りたい」と語る暁海。15年の大恋愛の末に、ふたりがくだした決断とは。
STAFF & CAST
監督:藤井道人/原作:凪良ゆう『汝、星のごとく』(講談社文庫)/出演:横浜流星、広瀬すず、松村北斗、中村アン、濱田岳、尾野真千子、木村佳乃、石田ゆり子、長谷川博己/2026年/日本/135分/配給:東宝/©2026「汝、星のごとく」製作委員会 ©凪良ゆう/講談社/2026年10月9日より全国公開。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。次のページでぜひご覧ください。
次のページ 写真ページはこちら

