ドラマ『Tシャツが乾くまで』(TBS系)が最終回を迎える。生方美久の脚本は、人間の身勝手さや不器用さをリアルに描いており、放送のたびに多くの視聴者の心にさざ波を立たせている。
あらためて注目されているのが、蒼井優の芝居だ。地上波連続ドラマの主演は実に18年ぶり。派手な仕掛けで視聴者を驚かせるタイプの芝居ではない。ナチュラルなのだが、ただ自然なだけでもない。柔らかく見える人物の奥に棘を感じさせる。エキセントリックな一面を見せても、どこか生身の人間としての柔らかさが残る。
土井裕泰監督が絶賛するのも、まさにその部分だ。蒼井の芝居には、うれしい、悲しいと簡単には分類できない「名前のつけようのない感情」があるという。悲しいのに笑い、冷静でいようとしながら涙が落ちる。監督はそんな演技を目の当たりにして、演出しながら何度も思わず「すごい」と言葉を漏らしたという(ENCOUNT 2026年9月4日)。では、蒼井優はどうやって、そんな芝居を身につけたのだろうか。(全3回の1回目)
夢はバレリーナ、小6でいじめも経験
1985年、福岡県生まれ。家庭ではテレビや映画などの大衆的なエンターテインメントに触れる機会が少なく、見るのが許されていたのはスタジオジブリ作品と『ドラえもん』くらいだったという。
一方で、バレエやクラシックのコンサート、演奏会などに触れることはあった。母は娘を宝塚に入れることを夢見て、2歳のときからクラシックバレエを習わせていた。レッスン中に眠り込んでしまい、何度も先生に起こされていたという。その後はバレリーナを夢見てレッスンに明け暮れた。
小学6年生のときにはクラスでいじめに遭った。広告などのモデルをしていたからターゲットになったのだ。友人をひとりずつ切り離されて、孤独に追いやられるという、子供には過酷なものだった。蒼井は地元の私立中学受験を選択する。

