9月11日に最終回を迎えるドラマ『Tシャツが乾くまで』(TBS系)。先の読めない展開で放送のたびに話題となり、主演を務める蒼井優(41)の演技力が、あらためて脚光を浴びている。15歳で映画デビューし、一時は引退も考えた蒼井が、再び演技の世界に戻ったきっかけは……。(全3回の2回目)

◇◇◇

重圧のなか演じた『フラガール』

 蒼井優が21歳のときに出演したのが、李相日監督の『フラガール』(06年)である。福島県いわき市の常磐炭鉱を舞台に、町おこしのため生まれた常磐ハワイアンセンターの誕生を描く物語で、蒼井はフラダンスチームの中心となる高校生を演じた。

ADVERTISEMENT

映画『フラガール』(2006年)試写会での蒼井優 ©文藝春秋

 大ヒット作『国宝』でも出演者を厳しく鍛え抜いた李監督の指導は容赦がなかった。もともとバレエ経験があるとはいえ、フラダンスは別物だ。しかも主人公である以上、劇中では一番目立つ場所で踊らなければならない。周囲が練習する一方、蒼井にはドラマ部分の撮影もある。練習時間が足りない。重圧が蒼井を押し潰した。

「夜中まで撮影して、ホテルに帰ってきて、一人部屋で練習するわけです。そんななか、ふとカーテンをあけて何度真っ暗な夜道を逃げ出してしまおうと思ったか(笑)」(シネマトゥデイ 2019年5月27日)

 泣きながら練習したかいもあって作品は大ヒット。蒼井の演技は高い評価を受け、映画賞を総なめにした。この年に受賞した数は軽く10を超える。

映画『フラガール』(2006年)試写会での蒼井優 ©文藝春秋

 ところが本人には違和感が残った。あまりにも高い周囲の評価と自分の評価が一致しなかったのだ。自著では、「私の中ではこの作品だけが特別な評価を受けることに戸惑っていたこともあった」と明かしている(『蒼井優 8740 DIARY 2011-2014』2014年・集英社)。

 そのわだかまりが解消されたのは、5年後のこと。東日本大震災の際、被災地である福島で行われた映画の移動上映で『フラガール』のリクエストが一番多かったと聞いたときだった。自分の作品が誰かを楽しませ、励ましていることを知り、胸を熱くして大いに喜んだ。