復帰のきっかけは…

 休業を続けた後、もう一度仕事をしてみたいと思うまで7カ月かかった。事務所に連絡したところ、山田洋次監督から『おとうと』(10年)の出演依頼が来ていると告げられた。

 山田作品はもともと大好きだった。10代の頃にはオーディションに落ちた経験もあり、いつか監督に認めてもらえる人間になりたいと思っていた。蒼井は「やります」と即答し、蒼井は「やります」と即答し、『おとうと』に出演して復帰を果たす。やがて『東京家族』(13年)や『家族はつらいよ』(16年)など、山田作品の常連出演者となる。最新作『TOKYOタクシー』(25年)では、山田作品のアイコン、倍賞千恵子の若き日を演じた。

映画『東京家族』(2013年)で優秀助演女優賞を受賞した、日本アカデミー賞授賞式での蒼井優。結膜炎のため眼帯をつけて出席した ©文藝春秋 

 復帰後、蒼井は「いろんなことをイチから学び直したい」と考え、これまで経験の少なかった演劇の世界に挑むようになる。今の引き出しでできることではなく、自分ができないこと、苦手なことを積極的にやっていきたいと考えたからだ。

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「演技の技術はもちろん大切だけど、もっと、人としての核の部分――日常生活も、生き方も、お芝居に対する姿勢も、舞台の上ではごまかせない。それが怖くておもしろい」(『蒼井優 8740 DIARY 2011-2014』)

 4人芝居『楽屋』(09年)では、渡辺えり、小泉今日子、村岡希美と共演した。『楽屋』を見た野田秀樹は「すごく才能があるから舞台を続けてほしい」と手紙を出して自作への出演をオファーしている。野田が手紙でオファーをしたのは、これが初めてのことだ。

 休業前の蒼井は、技術が感情を追い越したことで立ち止まった。復帰後の蒼井が求め始めたのは、その逆である。芝居の技術を磨くだけではなく、その技術を使う「人間」のほうを作り直すことだった。

 では、蒼井優は具体的にどのように役を作るのか。(続く)

次の記事に続く 「ダサい女優にはなるな」蒼井優の演技はなぜ凄い?練習はせず、大胆濡れ場も「パパッと…」 現場でみせる“徹底的なプロ意識”

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