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デビュー作『リリイ・シュシュのすべて』で、蒼井は売春を強要される14歳の中学生を演じた。汚れた行為で得たカネを踏みにじり、そのまま小さな川に飛び込んで泥まみれになるシーンが印象的だ。
原作のイメージとは雰囲気が違っていたものの、なぜか岩井俊二の心に残った。役者に合わせて物語のほうを変えたほどだった。蒼井が演じる役が迎える鮮烈な結末は、映画オリジナルである。
女優になる気はなかった
ところが当の本人には、女優になる気もなければ、映画界で生きていくつもりもなかった。撮影が始まってからも「これは思い出作りです」と岩井に話していたことを明かしている(CINRA 同前)。
当時はまだ「邦画」という言葉さえ知らなかった。学業を離れて現場でワイワイ過ごすのが楽しい、くらいの感覚だった。同じくデビュー作だった主演の市原隼人とは「みんなは、お芝居おもしろいって言っているけど、何がそこまで面白いんだろうね」と話し合っていた(シネマトゥデイ 2006年10月26日)。
教育熱心な家庭で育ち…「この仕事を好きになっちゃいけない」
『リリイ・シュシュのすべて』で脚光を浴びて出演作が相次いだが、それでも女優としてやっていくことは考えられなかった。映画界で生きている自分を想像すること自体、恥ずかしいことだと感じていたほどだ。
蒼井が女優という仕事に距離を置いていた背景には家庭環境がある。一家は非常に教育熱心で、小学生の頃は父から勉強を厳しく教えられていた。わからない問題の解き方を教えてもらった後には、自分の言葉で説明できるまで何時間でも繰り返さなければならない。それが朝まで及ぶこともあった。『アニー』への出演に強く反対していた父を蒼井自ら午前3時までかけて説得している。
