蒼井自身にも自分は「学業」の道に戻らなければいけない意識があった。芝居をすることで、本業の学業を疎かにしているという罪悪感がずっとあったのだという。

「この仕事を好きになっちゃいけないと、どこかで思ってた」(『だれかtoなかい』2024年10月20日)

容姿へのコンプレックス

 もう一つ、蒼井には容姿への強いコンプレックスがあった。自分の見た目が世間一般で言われる「可愛い」「キレイ」とは遠いのだと認識していた。市川猿之助との対談では「この容姿で女優ぶってもしかたないかなと」思っていたと明かしている(『蒼井優 8740 DIARY 2011-2014』2014年・集英社)

 自著では、赤ん坊の頃から「かわいい」と褒められるタイプではなかったと自虐的に振り返っている(『From♡優』2003年・講談社)。バレエの発表会で口紅を塗ることにも抵抗を感じていた。多くの人が考える「キレイ」に自分を近づけようとされること自体に違和感があったという。割り切ることができるようになったのは、ずいぶん後のことである。

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「目が小さい、鼻が小さいとかコンプレックスも多くて、自分の顔が可愛いとは思えなかったけど、ある日、この顔に見切りをつけたの。まず、自分よりも他人の顔を可愛いと思える私の心は美しいと思うことにした(笑)。そしたら、私は私でいいのかなって」『蒼井優 8740 DIARY 2011-2014』(同前)

2005年撮影 20歳当時の蒼井優 ©文藝春秋

 後年には「ほどよい顔だと思う。こういう顔って芸能界にいそうでいない」「ほどほどの顔でやらせていただいてます」とまで語っている(日刊スポーツ 2017年10月17日)。

日本映画に惹かれていった

「邦画」という言葉すら知らなかった蒼井だが、岩井俊二作品を入口にして猛烈な勢いで日本映画を観るようになった。特に心惹かれたのが、岩井監督の『ピクニック』、塚本晋也監督の『双生児』、阪本順治監督の『顔』の3本。「自分の知らないこんなに面白い世界があったんだ」と心を揺さぶられた。