ラブストーリーの形を借りて政治を語りたかった
――主人公のダンサーを演じたチェン・ホンレンさんは素晴らしいですね。
ワン 映画を撮る前に、広告の撮影で彼をキャスティングしたことがあったんです。映画を撮ることになってオーディションを行ったとき、彼がこの役にふさわしいと思った。彼の出演が決まってからは、彼自身のリアリティをもとに物語の展開を考えるようになりました。
――劇中に何度も登場する彼のナレーションは、とてもユニークで詩的な言葉だと思いますが、彼自身もああいう考え方をする人だったのでしょうか?
ワン あれは、当時の僕が世界に対して抱いていた考えです。ただ、当時の僕はもうそれほど若くなかったので、若者たちがこの世界をどう見ているのかを想像しながら書きました。
――タイトルは最初は『蛾』だったとおっしゃいましたが、なぜ現在のタイトルになったのでしょうか?
ワン 映画の編集が終わってみると、写実的な映画とはかなりかけ離れた、抽象的な作品になったと思ったんです。それなら、もっと超現実的なタイトルにした方がいいんじゃないかと思い始めました。
この映画を見た友人の一人が、有名な詩人、ホンホン(鴻鴻)の詩に「逃亡者に捧げるダンス」という作品があって、この映画にぴったりだと勧めてくれたんです。確かに、このタイトルはこの映画に合っていると思った。ある意味では、この映画はラブストーリーという形を借りて、政治を語りたかったんです。それで、すぐにホンホンさんからタイトルを(原題に)使う権利を買いました。
無数のロケット花火を打ち上げる台南の祭りで撮影
――この映画は、起承転結のある物語とはかなり違いますね。ドキュメンタリー的な部分もあれば、実験的で、超現実的な部分もあります。
ワン 僕自身、抽象的なものが好きなんです。物語に対して、ある種の抵抗感を持っていました。映画で物語を語るだけでは面白くないと思っていた。当時の台湾映画には、現実を客観的かつ冷静に見つめる作品が多かった。僕は、その時代にしか存在しなかったような、カオスで、過激で、騒がしい現実を反映した映画を作りたかった。ストーリーを超えた何かを、観客に体感してもらえる映画を作りたかった。

