国松氏は「圧力」を否定する一方、「ひょっとしたら飯塚事件について妥協してくれと言っているように受け取られたかもしれない」とも語っている。そして今回、NHKの番組には国松氏がまた登場していた。MCT118法の導入当時について「ガイドラインもなかった」と語った人物である。2018年の西日本新聞と、2026年のNHKがここでつながった。
「犯人と久間氏のDNA型は実際には一致していなかった」
もう一つ、つながったものがある。DNA型鑑定の写真の元ネガだ。死刑執行後に弁護側に開示された元ネガには、裁判の証拠写真では示されていなかった範囲まで写っていた。だから今回NHKで、そのネガが画面に出てきたとき、「あ、これだ」と思った。
しかも今回、その先まで進んだ。
弁護団は、残されたネガの画像の検証を、法医学が専門の筑波大学・本田克也名誉教授に依頼した。本田氏は足利事件のDNA再鑑定にも携わった人物である。本田氏が注目したのは、ネガの端に残っていた「DNA型のような複数の黒い影」だった。その形状や位置などを分析した結果、犯人のDNA型とは一致する一方、久間氏の型とは明らかに異なるとして、犯人と久間氏のDNA型は実際には一致していなかったと結論づけた。
ならば、今の技術でもう一度DNA鑑定をすればいいのではないか。足利事件ではそれができた。残されていた試料を再鑑定した結果、菅家さんと犯人のDNA型が一致しないことが判明し、再審無罪につながった。
実は久間氏も、生前にDNA型の再鑑定を求めていた。ところが科警研は「現場試料は使い切っている」とし、再鑑定は実施されなかった。つまり飯塚事件では、現在の技術でもう一度調べようとしても、その元になる試料が残っていないのだ。
しかも、残っていないのは試料だけではなかった。2018年11月21日の西日本新聞によれば、弁護団が当時の鑑定を確かめるため、実験ノートや写真、データなどを求めたところ、一部を除いて「不存在」とされた。実験写真やネガも「技官個人の確認用」とされ、廃棄したと思われるという。西日本新聞は「鑑定記録や写真は私物か」と見出しをつけた。
DNAをもう一度調べようにも、元の試料がない。当時の鑑定がどう行われたのかを検証しようとしても、実験ノートや写真、データなどの多くが残っていない。