「病気になったのは、誰のせいでもなく、偶然が重なった結果」
――医学部にいると、将来、医師になる人と机を並べているわけですよね。感情が揺れ動きませんか。
小枝 もちろん、何も感じないわけではありません。けれども、妬ましさは本当にないんです。そういうフェーズでもないのかもしれません。ただ病気になったのは、誰のせいでもなく、偶然が重なった結果です。それは理不尽なことですが、一方で仕方のないことだとも思います。
少し思うことがあるとすると、多くの同級生に対して病気を打ち明けずに過ごしたことでしょうか。こうした伝え方になってしまったことを、理解してほしいなと思います。
自分が病気になり、病気や医療に対する解像度が上がった
――病気になってみて、これまでと風景の見え方の違いを教えてください。
小枝 私自身はもともと、整形外科に興味を持って医学部へ入学しました。高1のときにひざの前十字靱帯断裂の手術をしてから、医師に部活復帰をサポートしてもらったことが、志すきっかけになりました。1年間の浪人生活を経て入学したわけですが、この浪人生活が医師への憧れをさらに強くしたと思っています。
正直に言えば、受験期に、「医師として患者さんにがんや延命治療を告知をすることになる」と思ったことはあります。けれども、自分が告知される側になることは、まったく想像の外でした。いまは、患者の立場になってみて、同じように苦しんでいる人が大勢いることを肌身で感じることができます。
――医学部で学ぶ多くの人は、がん当事者の視点は持っていない。
小枝 もちろん、医学部の同級生は各々が高い志を持ち、本気で学んでいます。そして、「がん治療に貢献したい」と言っている人たちの多くは、がんの治療技術や発見率の進歩や向上などの良い面に着目しがちであるけれども、どんなに治療技術が進歩したとしても、医療の限界がなくなるわけではなく、必ずどこかで助けられない人は出てくるわけですよね。自分が病気になり、こういった病気や医療に対する解像度が上がりました。そして治療困難な患者さんに寄り添う医療に少しでも貢献したいと感じるようになりましたね。
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