深みのある低音ボイスで『攻殻機動隊』バトー、『メタルギアソリッド』のソリッド・スネークなど、多くの人に愛される人気キャラを数多く演じてきた声優・大塚明夫さん。2015年に亡くなった父も同じく声優で、2027年に放送が予定される『新 美味しんぼ』では、海原雄山役を父から受け継いで演じる。
長らく「確執」をささやかれていた父との関係性や、声の世界に踏み入れたきっかけなどを聞いた。
父・大塚周夫との間に“確執”は……
大塚明夫さんの父・周夫さんは同じく声優。『ゲゲゲの鬼太郎』のねずみ男や『美味しんぼ』の海原雄山などで知られる名優だ。生前から、なぜか確執をささやかれることが多かったことについて、大塚さんは「別に、そもそも仲違いもしてないんです」と笑う。むしろ「馬鹿親父と馬鹿息子で、ちょうどいい関係だった」と振り返る。
とはいえ幼少期は、役者という仕事にいいイメージを持っていなかったという。父が36、37歳のとき、所属していた劇団を辞めて小沢昭一さんが作った「俳優小劇場」に研究生として入ると言い出し、収入が途絶える不安から母が「辞めてください」と泣いていた記憶が今も残っているそうだ。
にもかかわらず、なぜ大塚さんもまた芝居の世界に進んだのか。
大塚さんは大学を中退後、トラック運転手として働いていた。ある時「マグロ船に乗らないか」と誘われ、日常から抜け出したい一心で乗ろうとしたが、歯の治療が間に合わず断念。そこから何かを変えようと芝居の道へ進むことにしたという。
「楽しい人生にするためには、ミュージシャンになるか、役者になるかしかないと思って。乾坤一擲と言ってしまえば聞こえはいいけれど、それで芝居を始めたんです。だから、もう何も考えてない。典型的な昭和のあんぽんたんなんです」
「父の役」を引き継ぐことについて、どう思っているのか?
もともと、声の仕事もするつもりがなかった。転機となったのは父の誘いだ。劇団とアルバイトを並行する中、ある日父から「お前、声の仕事をやってみるか?」と誘われた。
その後、大塚さんは『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』、『ブラック・ジャック』を始め、いくつもの有名タイトルに出演。父との共演も数多く、『METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOTS』では“親子”をそれぞれ演じた。
周夫さんが2015年に亡くなった後は、大塚さんがその役を引き継ぐことも増えている。続くインタビュー全文では、そうした役を演じることへの想い、『攻殻機動隊』バトーや『メタルギア』シリーズの思い出、そして「スゴい」と感じる後輩声優まで、じっくりと聞いた話をまとめている。(つづく)

