深みのある低音ボイスで『ルパン三世』の次元大介、『メタルギアソリッド』のソリッド・スネークなど数々の人気キャラを演じてきた声優・大塚明夫さん。中でも『攻殻機動隊』で演じたバトーは彼のお気に入りの役の1つで、作品自体への思いも強い。
2024年に亡くなった草薙素子を演じた田中敦子さんへのあふれる思いや、『イノセンス』のエピソード、さらに今年4月に独立して設立した新事務所「トッポーネ」の裏側まで語ってもらった。
「素子役がいなくてさあ」大塚明夫が田中敦子を“推薦”した
――大塚さんの代表作についてもお話をお聞きできればと思います。著書の中では『攻殻機動隊』のバトーを好きなキャラクターの1人に挙げています。そもそも草薙素子役に田中敦子さんを推薦したのは、大塚さんだそうですね。
大塚明夫さん(以下、大塚) たしかそうだったはずです。音響監督の若林和弘さんとはよく仕事をしていたんです。彼が「素子役がいなくてさあ」と言ったので、「いるよ、いるよ」と紹介したのが、あっちゃん(田中敦子さん)です。
――田中さんのどのあたりが素子に合うと考えたんでしょうか。
大塚 直感ですね。上手い人はほかにもいるんですけど、あの作品の草薙素子って下品さがないじゃないですか? それに、気位の高い役があっちゃんにとてもはまるなとも考えて。
素子は公安9課という部隊のトップじゃないですか。高い地位にいる人の言葉に、ゴリラたちが「はいっ」と言うことを聞く。例えば『007』のジェームズ・ボンドであれば、女王陛下の兵士、家臣であることに誇りがある。そこには王様の部下であることとはまた違う誇りが、もう1つ加わっていると思うんです。素子をそういう役だと考えた時、「これはあっちゃん、いけるんじゃないか」と思ったんです。
――田中さん演じる素子、大塚さん演じるバトー、そしてトグサを演じるのは、大塚さんと長年の付き合いがある山寺宏一さんでした。3人の関係性を演じるのは楽しかったですか。
大塚 楽しかったですね。あっちゃんは何かにつけて、僕と山ちゃんを「飛車と角みたい。私のナイト」と言ってくれるのが、またうれしくてね。
