ドラマ「VIVANT」とは違い…

 ただ、ドラマとは異なり、別班の人々に捜査や逮捕の権限はない。

 彼らは自衛隊員であることを隠すため、普段は民間会社の会社員になりすましている。目立たないよう小さな会社が多いという。「監視を第一に考え、動きやすい場所を考えて決める」(A氏)という。海外での活動も銃撃戦もあり得ない。非公然組織のため、外交官特権など政府の保護を受けられないからだ。仲間の自衛隊員にも「別班員」であることを隠すため、駐屯地には近寄らず、定期的に義務づけられる射撃訓練にも参加していない。拳銃どころか、護身用のナイフも持っていない。さらに「海外活動どころか、パスポートを持っていない人も多かった」(A氏)という。

©shironagasukujira/イメージマート

 A氏によれば、別班は、おおむね30代後半から50代の約20人で構成されていた。外見を見ると、制服はもちろん着ていないし、髪も長く伸ばしているので、自衛隊員には全く見えない。ただ、メンバーはみな、防衛大学校卒業者を含む幹部自衛官だった。相手の心理戦や情報工作への対抗方法を学ぶ、かつての「心理戦防護課程」で「才能がある」と見込まれると、スカウトされた。ロシア語や中国語、朝鮮語を主に学ぶが、スペイン語が流暢な人もいたそうだ。

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家族が普通の会社員だと信じ込んでいたケースも

 別班の人々は、家族にも自分の仕事を明かせない。身分は公務員なので、年金や保険から、自衛官だということを家族に悟られることはあったという。ただ、別班員になった後に結婚したり、家族が本人の仕事に無頓着だったりすると、普通の会社員だと信じ込んでいたケースもある。

 海外で情報を実際に入手するのはエージェントと呼ばれる現地の協力者になるという。別班員はコントローラーともケースオフィサーとも呼ばれ、協力者を操るのが仕事になる。例えば、北朝鮮は閉鎖国家なので、道路や橋の大きさは分かっても、強度までは分からない。ミサイル基地に通じる道路や橋の強度が分かれば、ミサイルを展開するルートを絞り込め、ミサイル防衛の大きな助けになる。

 半世紀以上、派手な銃撃戦や海外での工作活動はないが、着実に成果を挙げてきた別班。しかし、あるタイミングで大きな曲がり角を迎えたようだ。

次の記事に続く 「出世は2佐止まり」「居酒屋で陸幕長を社長と呼ぶ」…ドラマではまったく描かれない《自衛隊別班》の“切なすぎる実情”