米軍から「超A級」と太鼓判を押された“しびれる情報”
徐々に別班の士気が落ち、防衛大臣直轄の組織で、秘密漏洩や外部からの不審な働きかけなどに対処する自衛隊情報保全隊との役割の違いが見えにくくなっていった。当時、不満を抱いた人の一部が内部告発をするなど、混乱も生まれた。
ただ、そんななかでも、別班は輝かしい仕事を残した。その一例が、06年7月5日に起きた、北朝鮮による計7発の弾道ミサイル発射に関しての動きだ。
当時、米軍は衛星情報などで、ミサイルの具体的な種類や発射地点を特定していた。別の情報関係者は当時、「CIA(米中央情報局)が、まるで潜水艦や地上から撮ったのかと思うくらい精度の高い写真を提供してくれた」と語っていた。別班はこのミサイル発射事件で、米軍から「超A級」と太鼓判を押される情報を提供したという。別班の情報は、やはりヒューミントだった。そこで得た情報がことごとく米側の衛星情報と一致した。米軍は「しびれる情報だ」と感激したという。
今も別班は存在しているのか
では、別班は今も存在しているのだろうか。A氏は、この点について言葉を濁した。
ここからは筆者の推測になるが、小泉氏の「これまで存在しておらず、また現在も存在していません」という言葉は、裏を返せば「(かつては存在していたが)現在はもう存在していない」というニュアンスを含んでいるのではないか。非公然組織である以上、当然ながら「過去に存在した」とは公式に認められない。それでもあえて現在形も含めて否定したのは、別班がすでにその役割を終えたことを示唆しているように思えてならない。
理由は、日本政府が進めている情報力強化政策だ。今年7月31日、国家情報会議と、その事務局を担う国家情報局が発足した。政府は、来年度中の発足を目指し、対外情報庁とも呼ばれる、対外情報の収集を専門とする新組織の創設も検討している。対外情報庁の仕事は、別班とかなり重なる要素が大きい。そうであれば、別班はもう不要になるだろう。
遠くない将来、かつて「別班」と呼ばれた人々は、新設される対外情報組織の職員として、日本のインテリジェンスの舞台に再登場することになるのかもしれない。
