鹿の頭蓋はUの字型に吹き飛び、目玉が半分飛び出す。一瞬前の美しい顔は、銃弾の絶望的な力によっておぞましい姿に変えられ、脳天からは湯気が立ち始めた。

切れた息を整えながら立ち尽くす私は「弾の通ったところってそんなに熱いんだ」と変な納得をする。

数秒後、汗が私の頬をツッと伝い、アゴからポッと落ちたのを感じて「違う、鹿と俺が熱くて、空気が冷たいから湯気が出てるんだ」と、やっと血の沸騰が収まってきたのを感じた。

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ナイフを突き刺し、内臓を引きずり出す

鹿の亡骸に近付く。普段であれば「意識あるかな?」「痛くないかな?」などと考えるが「感じる脳味噌が無いのだから」と、分かったつもりで遠慮なく身体にナイフを突き刺し「早くバラして、良い肉にするんだ」と、違う使命を帯びているような錯覚を自分で纏い、内臓を引きずり出す。

冷えた指先を腹腔内に差し込むと、火傷しそうなほどに熱い。弾は胃袋を掠めていた為、胃液が手に付かないように注意しながら腑分けする。冷たい川の水で手を洗う時間は、なるべくなら短い方が良い。

食べる部位をまな板に取り、鹿の身体は川に沈め、内臓は取り敢えず出しっぱ。本格的な解体と処理は明朝。火を起こし、野営の準備。米を炊き、フライパンでハツとタンとレバーを焼く。

仕留めたばかりの鹿の肉の味

持参の調味料はスパイスソルトと醤油だけだが、この時期の鹿は臀部に真っ白な脂肪を蓄えている為そこを切り取り、熱くなったフライパンに溶かしては食べたい肉を投入して揚げ物のように焼く。

一日中歩き回った身体に動物性の脂と調味料の塩気が沁み渡り、ジュウジュウと音を立てる肉片を頬張ると身体の芯から温まり力が湧く。胃の中に入っていった食べ物の温かさは、刻々と寒くなる外気を感じさせないほどに強く、豊かだ。

早い夕食だが、ヘッドライトを持ってきていない為、この谷なら16時半には寝る支度を完了させなければならない。