「声の仕事」に長年携わってきた元NHKアナウンサー・山根基世氏は、上皇ご夫妻の言葉には「思いが込められている」という。美智子さまの朗読を聞いたときの感想を山根氏が語った。

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美智子さまの朗読の声

 美智子さまとは一度、お言葉を交わしたことがあります。2014年、私が伊藤忠記念財団の理事として参加していた日本国際児童図書評議会の40周年記念展覧会に、お忍びでいらっしゃったのです。80歳を迎えられていましたが、ヒールのある靴を履かれていて、溌剌としていました。

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お二人で「象徴」を体現された上皇ご夫妻 Ⓒ時事通信社

「NHKの山根です」とご挨拶したら、「『あけぼの』で見ていますよ」とおっしゃったので、驚きました。私は当時、聖パウロ女子修道会が発行していたカトリック誌『あけぼの』の対談に出たり、原稿を書いたりしていました。ただ、翌年休刊する予定だと伝えると、「どうして? いい雑誌だったのに」と残念そうな表情をされました。

 しばらくして、侍従の方から電話がありました。「美智子さまがお書きになった本がございますので、お送りしてもよいでしょうか」とのお申し出でした。美智子さまのお言葉をまとめた『皇后陛下お言葉集 歩み』と、『降りつむ 皇后陛下美智子さまの英訳とご朗読』を頂戴しました。

『降りつむ』には、美智子さまの朗読が収録されたDVDも入っていました。私も大好きな詩人、永瀬清子の詩には、深い共感がこめられていて、心に感じたものをありのままに表せば、こうなるのだな、と感じる素直な朗読に、胸を打たれました。

山根基世氏は、NHKのドキュメンタリー『天皇 運命の物語』のナレーションを務めた ©文藝春秋

 美智子さまと同じく、上皇さまの「お言葉」には、いつも思いがこめられていると感じます。

 生前退位を目前にした2018年12月20日、上皇さまが天皇として最後に行った誕生日記者会見で、「平成が戦争のない時代として終わろうとしていることに、心から安堵しています」とおっしゃった時、かすかに声が震えていました。美智子さまへの感謝を述べられた時もそうでした。