悩みながらも進めていった
有働 「困ったな」とは?
西川 タイトルどおり、私には知り得ないことをどう伝えるのかと。広島に生まれたので戦争や原爆を語る人が身近にいましたが、当事者たちの言葉は常に重く、痛ましくて、子孫の私たちはただ痛みに耐えるように沈黙して聞くしかない。それを体感していたからこそ、過去の戦争の継承は本当に難しいし、後から生まれた人間が語っても説得力などあるだろうかという懸念がありました。
有働 そうでしたか。
西川 一方で、広島以外の全国各地の空襲については、今回の題材をやろうと思うまでは多くを知りませんでした。だったら孤児を描くとしても広島ではなく東京にしようかなとか、第三者として客観的に向き合えると思った題材を選びました。何度もやめたほうがいいかなと悩みながらも進めていった感じですね。
有働 作品が完成した今、そのあたりの苦悩は晴れましたか?
西川 試写を観てくださった人の話を聞いて初めてホッとしたところがあります。よく言われるのが「不謹慎かもしれないけどすごく面白かった」とか「不謹慎かもしれないけど、自分も前を向いて人生を生きなきゃという気持ちになった」とか。
有働 「不謹慎かもしれないけど」という前置きがついてくる。
西川 日本人が過去の戦争について考える時に、必ずその前置きがついてくるから振り返りにくかったのかなと思います。生真面目に反省しながらでないと戦争を語ってはならないというある種の呪縛、というと言葉が重いかもしれませんが。
※約8500字の全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア『文藝春秋PLUS』と『文藝春秋』2026年11月号に掲載されています(西川美和×有働由美子「私たちの知らない戦争」)。
・戦争反対の流れは壊れた
・子役たちに設けた学習の時間
・性別役割分担も成立しない映画業界
■うどうゆみこ アナウンサー。鹿児島県生まれ、大阪府育ち。1991年にNHK入局。2018年に退職しフリーに。現在の出演番組は『有働Times』(テレビ朝日系)など

