著者の集大成にして新境地と呼べる本だろう。国際政治の話題から一般教養まで幅広いテーマの著作で人気を博してきたが、そうした一連の文筆活動のエッセンスを注ぎ込み、定年後の生き方について語っている。
「本書の準備中に、著者は腎臓移植をお受けになったんです。そうした契機もあって、人生を振り返るような側面が強く出たのかもしれませんね」(担当編集者の沼尻裕兵さん)
著者はいわゆる「鈴木宗男事件」に関連して有罪判決を受け、のちにそれが「国策捜査」であったと主張した。日本という国に対して思うところがある立場だろう。それでもなお、自分と年齢の近い定年世代にとって「日本は世界一の楽園である」と認識しているという。本書ではその認識に至った根拠を示し、さまざまな角度から定年後の生き方を掘り下げる。
「著者とは雑誌での連載を通じて10年以上お付き合いをさせていただいています。そのやりとりの中で、『人生において定年後が一番楽しい』『定年後の人にとって日本は天国のようなものだ』という言葉が出たのが印象に残って、本書の企画を考えました。その頃、老後資金として2000万円の貯蓄が必要であるとさかんに報じられ、老後に対する不安や孤独といった暗いイメージがつきまとっていたんです。それもあって、老後への明るいメッセージを『知の巨人』と呼ばれる著者から発していただくことには、インパクトと意義があるのではないかと感じました」(沼尻さん)
仕事に邁進していた40代、50代の頃とは違うマインドの持ち方、退職金の使い途、定年後の豊富な時間を使った学び直しの方法論、交友関係の選び方まで、筋道立った明快な議論を展開していく。
「教訓を押し付けるのではなく、あくまで著者の膨大な知識を通して、選択肢を示す本を目指しました。さらに介護施設を選ぶ4つのポイントであるとか、学び直しに高校の教科書を使うなど実生活にすぐに取り込めるような内容を盛り込んだ本にすることも意識して編集しています。『もっと詳しく知りたい』という声に応え、今年6月には〈実践・成功編〉として第2弾も刊行しており、こちらも好調です」(沼尻さん)
早めの備えとして、40代の若い読者にも響いている様子だ。
2025年9月発売。初版6000部。現在6刷10万6000部(電子含む)
