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「あなたと会うつもりはない」
行間からは、「あなたと会うつもりはない」という明確な意思が感じられた。むせかえるような暑さのなか、立ったまま電車を一本やり過ごし、私は彼女とのこれまでのやりとりのすべてを削除した。
西日を照り返す薬局の看板。ひぐらしの鳴き声。その記憶はあまりにも鮮烈で、いまでもあのホームに立つと時おり思い出す。悲しかった。若いころ好きだった男と別れたとき以上につらいと思った。恋をしていたわけではない。彼女は10年以上付き合った、年下のママ友だった。
彼女は美しく、優しかった。おっとりとして品があり、ロングヘアでファッションもエレガント。ハリー・ウィンストンで買い物するような、経済的にもたいへん恵まれた専業主婦である。
しがないライター稼業、カジュアルおばさんの私とは、見た目も年齢もライフスタイルもほとんど重なるところがなく、「なぜ仲が良いの?」と周囲からよく不思議がられたものだ。彼女も飲兵衛で、何かと地縁もあって、気を許し合う仲になった。また子どもと夫同士も気が合ったため、家族ぐるみの付き合いが続いた。
