「はげ」をテーマにした高瀬隼子さんの『め生える』。「弱さ」をテーマにした大前粟生さんの『チワワ・シンドローム』。この2作の共通点は、主人公とその親友の友人関係が描かれていることです。

 当たり前のものだった二人の関係性がいびつなものになる瞬間を鋭く描き出すお二人が、いま「友情」について考えることとは。対談の様子をお届します。(全3回中の3回目/司会進行=U-NEXT・寺谷栄人/撮影=松本輝一)

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友だちって、なんだ?

大前 高瀬さんの『め生える』は真智加と親友のテラの話でもあります。二人の間で、はげている/はげていないの違いでパワーバランスが決まってしまって、そのことをずっと真智加は思い悩んでいますよね。高瀬さんは、登場人物がはっきり自覚しているわけではないけど、ずっと感じているプレッシャーみたいなものを書くのがすごく上手ですよね。自分だったら展開を派手な方、派手な方にもっていってしまう気がするんですけど、高瀬さんはその世界のなかの登場人物たちの、働いて家に帰ってみたいな日常のなかに留まり続けながらずっと面白いというのがすごいなと思っていて。

 

高瀬 友だちとか友情というのはたぶんまた書くだろうなと思うし、自分のなかで書ききれてないテーマだなと思っています。

 そもそも友だちって難しいなと思っていて。すごい好きな友だちが何人かいるんですよ。大事にしたいし、今後も生きている限り会いたいなと思うんですけど、全然会いたくないときもあったり、遊ぶ約束したんだけどすごくめんどくさいと思ったりとか。行くと結局楽しいんですけど、楽しさとは別にすごく疲れて帰ってくることもある。でも会いたくないわけじゃないし、たまにめっちゃ憎くもなるし、その憎さはその子が何かをしたからじゃなくて自分の内側から出てるなと思ったりして。私が抱えている友情というもののわからなさが作品に出てるかもしれないけど、まだ書ききれてないとも思ってるんですよね。

 大前さんが『チワワ・シンドローム』で書かれたこの友情は結構特殊ですよね。

大前 友情というか支配という感じですよね。

高瀬 弱くて可愛い琴美を、強いミアが「親友だよ」って支配する。だけどこの二人の友情はこの先、形を変えて続いていくという希望が見える話でもあると思います。で、この二人は特殊で支配しすぎですけど、周りを見渡しても、多少なりともそういう要素がある友人関係もあるのかなとは思う。

 

高瀬 私はいま35歳なんですけど、ここから新しく友情を築くのって、まず家から出ないから人と出会わないし、出会えたとしても継続した関係を結ぶのも難しくて大変だなと。だからこそいまある友情を大事にしたいと思っていて。でもそれも自分勝手だなという反省もあるんです。私の友だちは家からちゃんと出ているはずなので、新しい友だちとの出会いがあって、新しい友情を今後も築けるかもしれないけど、私だけはそこにしがみつこうとしてる。それはその本人を見ないで、「友だちでいる」という形式にしがみついてるんじゃないかとか、思っちゃって。それって支配ではないけど、純粋な友情でもないんじゃないかとか、最近ずっと考えています。