あぁ、これは、一穂さんが放った一本の矢だ。そう思った。読み手の胸に、真っ直ぐに深々と突き刺さる。

 物語の真ん中にあるのは、「反希望クラブ」だ。メンバーは「年齢も職業もさまざまで、共通しているのは『誕生日によって生まれながらに何らかの希望を背負わされてしまった人』」たちである。

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『希望の子』

 クラブを立ち上げたのは、小学校でスクールカウンセラーをしている青山梢だ。「失声症」がある小5の橋本雪花は、梢の相談室を訪れたことをきっかけに「反希望クラブ」のメンバーとなり、プライベートで梢の自宅に通うように。そこにはクラブの最初のメンバーでもある、大学生の朝海もしょっちゅう遊びに来ていた。

 梢は1995年1月17日、阪神・淡路大震災の日に神戸で生まれ、雪花は2011年3月11日、東日本大震災の日に堺で生まれ、朝海は2001年9月11日、アメリカ同時多発テロ事件の日にニューヨークで生まれた。

 震災の日に梢が生まれたことで、離婚寸前だった両親の関係は「リセット」されたものの、「そんな魔法は長保ちしない」。冷え切っていた関係を、それでも諦めきれなかった二人は「お互いを傷つけ合いながら思い出で痛みをごまかして、時間を無駄にしてた」。

 雪花は生まれる2年前、父方の祖父が亡くなったことで、両親は福島に帰り、父親はクリーニング店を継ぎ、雪花の祖母とともに店を切り盛りしていた。雪花の母は里帰り出産を希望し、大阪に帰っていたため震災は免れたものの、雪花の祖母は津波で亡くなっており、雪花の父親は、今も福島で暮らしている。