部隊の設立に関わった元幹部の一人は、活動を「スパイのまねごと、情報収集ごっこだった」と振り返っている。協力者に直接会わず、旅行ガイドブック『地球の歩き方』やインターネット上の情報を使って報告書をまとめる隊員もいたという。海外派遣が減るなかで、情報収集活動が形骸化し、実績づくり自体が目的になっていたのか。
特に引っかかったのは「営業」という言葉
しかし仕事がお粗末だったから問題が小さい、とはならない。そもそも、なぜ市民の思想信条や性的嗜好まで記録する41項目もの仕組みを設ける必要があったのか。
さて、筆者が特に引っかかったのは「営業」という言葉だった。
これで思い出したのが、今回の現地情報隊の記事を書いた毎日新聞の遠藤浩二記者が、以前から取材してきた公安警察による大川原化工機事件なのだ。
化学機械メーカー・大川原化工機の社長ら3人が不正輸出の疑いで逮捕・起訴され、のちに起訴が取り消された冤罪事件だ。記者が捜査関係者に取材すると、驚くような証言が出てきた。
「大企業だと警察OBがいる。会社が小さすぎると輸出自体をあまりやっていない。100人ぐらいの中小企業を狙うんだ」
これは、大川原化工機事件を担当した公安警察の係長が、日ごろから口にしていた言葉だという。ほかにも『火のないところに煙は立たぬ』ということわざがあるが、我々が火を付けに行っただけだ」という内部証言があった。
さらに、捜査のきっかけも驚きだ。公安の捜査員が輸出管理の講習会で新たな規制を知り、「新しくできた規制での立件第1号は注目されるから、調べることにした」というのだ。犯罪の疑いをつかんだというより、事件になりそうなネタを探していたことになる。
これらの記事を読むと、本来は社会の安全を守るための活動が、まるで営業成績を上げるための活動になっていなかったかと疑問を抱いたのだ。
もちろん、公安警察と自衛隊は別の組織だ。しかし、共通する問いがある。仕事の目的が「仕事をしたという実績づくり」にすり替わっていなかったか。そして組織内部でチェックが働かなくなれば何が起きるのか。大川原化工機事件を思い出すとやはり怖い話だと思う。
ところで、今回の毎日新聞の記事には、もう一つ興味深いキーワードがあった。
「スパイ映画」である。