殴られて鼻血を出しても可哀想に見えない方がいい

三島 千早さんの『男ともだち』は、小説という芸術として完成しているので、そのままトレースしても意味がないし、絶対に面白くなりません。ですから、映画化に際しては、「原作を映像にする」という考えではなく、監督である自分や脚本家、プロデューサーが、それぞれどこに何を感じたのかをもう一度拾い集めて、再構築しようと思いました。神名とハセオとともに、もう一度旅をするように、「時間」を組み立て直した感覚です。

映画『男ともだち』©2026『男ともだち』製作委員会

千早 キャスティングはどういうふうにお決めになったのですか。

三島 今回、まず神名を誰に演じていただきたいかを考えたときに、クリエイターとしての苦悩をわかりつつ、恋人の彰人(あきひと)や浮気相手の真司、“男ともだち”ハセオとの距離感を身体で表現でき、かつ物語をトータルにみて芝居のプランを立てられる文学好きな俳優にお願いしたいと思いました。それが松岡茉優さんでした。

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映画『男ともだち』松岡茉優 ©2026『男ともだち』製作委員会

 松岡さんは、彼女が高校生のときに担当していたインタビュー番組ではじめてお会いしたんです。会話のリズム感がとてもいいクレバーな渇望している人、という印象を受けました。そこからどんどん俳優としていろんな作品でお見かけするようになり、自分の与えられた役を俯瞰的にとらえ、非常に繊細なお芝居をする方だなと思って見ていました。5枚ものお手紙を書いて、ふたりきりでお茶をして、お互いの現場のいろんな話をして、千早さんの原作と脚本の澤井さんと三島監督の組み合わせが奇跡的だとおっしゃって、共に作るのはやはり松岡さんしかいないという思いでご相談したところ、ご快諾いただきました。

映画『男ともだち』©2026『男ともだち』製作委員会

千早 私は神名を演じていただくなら、殴られて鼻血をだしていてもまったく可哀想に見えない方がいいな、と思っていたのですが、松岡さんは見事でした。ハセオを演じてくださった成田(凌)さんは大変なプレッシャーだったのではないでしょうか。私の著作の中でもハセオの人気は高いので、映画化が決まったときは、SNSで「誰がハセオをやるの?」という声がたくさんありました。それだけ「自分にもハセオのような男ともだちがほしい」と思っている女性が多いのだと思いますが……。