同じベッドの上にいても無邪気に安心しているふたり

三島 小説の言葉の力は大きいですよ。露月さんが神名とハセオのことを「この子たち、いい歳して赤ちゃんみたいに無防備な顔して一緒にいるじゃない」と言うセリフが私はとても好きなのですが、この言葉は、ふたりの関係を見事に表していますよね。

映画『男ともだち』©2026『男ともだち』製作委員会

千早 赤ちゃんに性は介在しませんからね。

三島 そうなんです。同じ部屋で、同じベッドの上にいても、ふたりは無邪気に安心していられる。ですから、第2夜の富山での神名は、自分の絵を描けずに苦しみつつも、基本的には「ハセオ」という繭のなかで存在しているシーンにしました。ただ、その中でふとふたりの背景を感じる瞬間もあるように撮りたいと思い、松岡さんと成田さんに相談して、第三夜にかけて複雑な感情を繊細に積み重ねていきました。

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千早 この小説は2014年に発刊されたのですが、それから12年も経って、多様性やLGBTQがあたりまえの時代になっても、「“男ともだち”はアリか、ナシか」みたいな論争が、いまだに起きていて、不思議です。

映画『男ともだち』©2026『男ともだち』製作委員会

三島 本来、神名とハセオは「恋人」や「異性の友人」のようなわかりやすい記号を持たなくてもいいふたりです。それなのに、「男と女」というだけで何か意味づけをしたくなったり、恋愛感情をからめられたりしてしまう……。

千早 そうなんです。だから、映画の序盤で神名がハセオと再会したとき、本当にうれしそうな顔をしているのを観て、心からホッとしました。恋愛している相手に会ったときの高揚したうれしさではなく、本当に安心できる人に会えた無防備な顔をしている。「あ、本当に神名とハセオがいる」と思って、それだけで泣いてしまいました。