誰よりも理解し合いながら、決して愛し合わないふたりを描いた千早茜の小説『男ともだち』(文春文庫)が映画化された。監督を務めた三島有紀子と原作者・千早茜が、言葉と映像が映し出す、人間の孤独や無様さ、その先にある美しさについて語り合った。(前後編の前編/後編を読む)

(左から)原作者・千早茜さん、監督・三島有紀子さん 撮影:末永裕樹

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『男ともだち』を読んでひぃひぃ泣いてしまった

三島有紀子(以下、三島) 小説『男ともだち』に出会ったのは、映画『Red』(2020年)のプロモーションで島本理生さんとNHKの「あさイチ」に出演したときです。好きな本を紹介するコーナーで島本さんが大好きな本として紹介してくださいました。島本さんのおすすめならすぐにと思いましたが、撮影の準備中で読めませんでした。ところがコロナ禍で次に撮る予定の作品が延期になってしまったので、「そうだ、あの本を読もう」と手に取りました。

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監督・三島有紀子さん 撮影:末永裕樹

千早茜(以下、千早) 島本さんとは友達なんですけど、その話は今初めて知りました(笑)。

三島 読んで、とても身体に残る小説だと思いました。いまはこの世界にいない、かつての私の男ともだちを思い出したこともありますが、彼を喪った悲しみや孤独、自分の弱さの中でしか生きられていない自分を認める情けなさ、でもすべてを糧にしていく強さといった、自分の体内に潜んでいた感情が湧き出してきて、ひぃひぃ泣いてしまいました。

千早 「『男ともだち』を読んで泣いた」という感想は、あまり聞いたことがないので、少し驚きました。主人公の神名に共感できない、腹が立つ、という反応はよく聞きますが、そもそも共感される主人公を書こうとは思っていなかったんです。

三島 千早さんの小説には、自分ではコントロールできない、身体の奥に刻まれていた感情を呼び起こすなにかがありました。魅力的な小説を読んだときはいつも、登場人物が頭の中で勝手に動き始めるのですが、『男ともだち』の神名とハセオも、頭の中で小説に書かれていない時間を勝手に生き始めていて、いつか、このふたりを映像としてとらえてみたいと思いました。