番組は被害者の会関係者のインタビューだけでなく、10月26日にオウムが公開披露した「水中クンバカ」と呼ばれる修行(長時間水中に潜る)を取材していた。反オウムの関係者インタビューも放送されることを察知したオウム真理教は、信者の早川紀代秀、上祐史浩、青山吉伸がTBSテレビに乗り込み、放送前のインタビュー映像を視聴させるよう要請し、さらにはインタビューの放送を中止するよう圧力をかけたのである。その結果、坂本弁護士らのインタビューテープはお蔵入りとなった。

「教団にとって障害となるので殺害しなければならない人物」と名指し

 こうした一連の動きから、オウム真理教は坂本弁護士を「敵」として認識する。10月31日、早川、上祐、青山の3名が横浜法律事務所を訪れて坂本弁護士と協議するが、話し合いは平行線に終わるのであった。

オウム真理教では工場施設などは「サティアン」と呼ばれた ©文藝春秋.jpg

 そして11月2日の深夜から3日未明、オウム真理教の教祖・麻原彰晃は教団にとって障害となるので殺害しなければならない人物として坂本弁護士を名指しする。塩化カリウムを注射して殺害するようにと具体的な指示を与え、6人の実行犯(村井秀夫、早川紀代秀、岡崎一明、新実智光、中川智正、端本悟)は2台の乗用車に分乗し、坂本弁護士の自宅を目指した。

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 当初、6人の実行犯は帰宅途中の坂本弁護士を狙い、JR根岸線の洋光台駅周辺で待ち伏せしていたが、この日は文化の日で祝日だったため坂本弁護士は出勤しておらず、結局、電話で麻原の指示を仰いだうえで、深夜になってから坂本宅に侵入することになる。

 6人の実行犯は坂本宅に侵入すると、端本が眠っている坂本弁護士の身体に馬乗りになって殴打し、抵抗する坂本弁護士を早川が取り押さえると、岡崎が首を絞めて窒息死させた。新実、村井、早川は妻を取り押さえ、「子どもだけはお願い」との懇願に耳を貸すこともなく、中川が頸部を締めて窒息死させた。1歳の息子が目を覚まして泣き出すと、中川がタオルケットで鼻と口を押さえつけ、さらに新実が鼻口部を閉塞させ、窒息死させるのであった。

 3人の遺体は山梨県の上九一色村(現富士河口湖町)のサティアンと呼ばれる教団施設に運ばれたのち、11月4日から6日にかけて、坂本弁護士の遺体は新潟県、妻の遺体は富山県、長男の遺体は長野県に遺棄された。

坂本弁護士の遺体が発見された現場 ©時事通信社

 なお、坂本弁護士の身元を隠蔽するため、ツルハシや石を使って遺体の顔や歯を損壊。さらに、遺棄現場までの道中、ドライブインで「景気づけ」としてベニズワイガニを購入して実行犯たちで食べ、その殻を遺体とともに打ち捨てた。

次の記事に続く 一家殺人の実行犯でありながら衆院選に出馬、のちに麻原彰晃に叛逆した男・岡崎一明の末路《「坂本弁護士一家殺人事件」の知られざる闇》

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