MIT「95%」レポートの衝撃

 みなさんは2025年7月にマサチューセッツ工科大学(MIT)が発表したAIのビジネス実装についての調査結果をご存じでしょうか。「The GenAI Divide : STATE OF AI IN BUSINESS 2025」(「生成AIの分断:ビジネスにおけるAIの現状 2025」)という題名のレポートで、第1回でも少し触れましたが、世界中のさまざまな企業で行われている300件以上のAI導入プロジェクトの実態を調べたものです。

 このレポートでは冒頭できっぱりこう総括して、AI業界だけでなく、AI導入を思案する全世界の企業にも衝撃をもたらしました。

リード・ホフマン氏 ©時事通信社

「調査対象となった全世界の企業の生成AI試験導入のうち、95%が測定可能な効果を生まず、本番移行に至っていない」

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「企業向けにカスタマイズされたAIシステムは、静かに拒絶されている。60%の組織がそのようなツールを検討したが、試験運用段階に達したのはわずか20%で、実務稼働に達したのはわずか5%だった」

「ChatGPTやCopilotなどの汎用モデルは企業で広く普及(80%以上がテスト、40%が導入)しているが、個人の生産性向上に止まり、会社の業績には直結していない」

 本連載を読んでくださっているビジネスマンのみなさんにも心当たりがあるかもしれません。世界中の企業がこれまでにないほどAI導入に莫大な資金を投じています。全世界で300億から400億ドル、つまり4兆円から6兆円以上の投資が行われているとも言われています。にもかかわらず、なぜ期待されたような効果が得られていないのでしょうか。

Sakana AIが今年6月に発表した新AIモデル「fugu」 ©NurPhoto via AFP

 同レポートが興味深いのは、失敗の理由をモデルの性能だけに求めていないことです。日々の業務の流れにうまく組み込まれず、現場からのフィードバックを受けて改善し続ける仕組みがない。要するに、AIシステムと組織の仕事がつながっていないことをその要因としてあげています。

 社員が個人で生成AIを使い、メールを速く書けるようになることには意味があります。しかし、個人の作業時間が短くなることと、会社の中核業務が速く、正確に、より良くなることの間には大きな距離があります。たとえば、1通のメールを速く書けても、その後の確認や承認が従来のままなら、会社全体の仕事はほとんど速くなりません。AIの文書を人間が最初から調べ直すなら、見かけ上の時間短縮が新しい手戻りを生みます。個人の生産性と組織の生産性は別物です。企業AIの難所は、答えが実際の意思決定につながるまでの「最後の1マイル」にあります。その距離を埋めるのは、次のモデルを待つことではなく、仕事の手順、情報の流れ、責任の置き方を組み替えることです。

※約9000字の全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア『文藝春秋PLUS』と『文藝春秋』2026年11月号に掲載されています(伊藤錬「成果を生むAI実装、二つの条件」)。
・「それっぽい」稟議書は、なぜ使えないのか
・マニュアルには書き切れない「暗黙知」
・ベテランドライバーの技術を盗むように

文藝春秋

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成果を生むAI実装、二つの条件

出典元

文藝春秋

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2026年11月号

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