――主人公チュンホーを演じたジャクソン・イーには、撮影前、どのような準備をするよう求めましたか?

ヤン監督 ジャクソンは撮影に入る前、外部との接触を断ち、ひとり準備に集中する時間を設けていました。脳性まひのある方々の映像やリハビリテーションに関する書籍など、膨大な資料に目を通し、チュンホーという人がどのように歩き、声を出し、身体を動かすのか、一つ一つ探っていったのです。

 撮影チームも、脳性まひのある方々のご家庭や特別支援学校を何軒も訪問しました。そのたびに、ジャクソンは静かに部屋の片隅に座り、当事者とご家族とのやり取りを真剣に観察していました。

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第37回東京国際映画祭(2024)で来日した際のジャクソン・イー ©2024東京国際映画祭

 私たちは、チュンホーを演じるということが、俳優にとって限界に近い挑戦であることをわかっていました。撮影が始まる前から共有していたのは、現実に沿った表現で、真剣に人生を選択しようとしている、生き生きとした若者を描こうということ。ジャクソンもチュンホーも同じ、新しい時代を生きる若者です。ピュアな理想と社会に対する責任感を持つという内面的な共通点がありました。それでも、脳性まひがある人物を演じるということは、極めて複雑な作業です。動作を模倣するだけでは成り立たない。彼の身体的な表現や内面のあり方は、チュンホーのそれにふさわしいものでした。

映画『ちっぽけな僕の、おおきな世界』

働く者として見てもらうことが彼の尊厳

――撮影現場では、医療の専門家によるサポートもあったのでしょうか? また、作品をつくる上で、現実に忠実であることと映画としてのフィクションのあり方をどのように考え、バランスをとっていましたか?