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なんとか希望をつなごうと、アーティストは制作を続ける
セクション2は「破壊からの創造―美術のちから」とのタイトルが付される。さまざまな惨状は、アーティストにとって制作の契機にもなり得るという仮説のもと、その実例を集め展示している。
池田学《予兆》には、巨大な波がビルや車を飲み込む様子が描かれている。この絵は2008年に描かれたもので、まさに東日本大震災で東北を襲った津波の予兆に見えてしまう。
加藤翼《The Lighthouses - 11.3 PROJECT》は、東日本大震災によって痛手を受けた福島県いわき市で収録された記録映像。被災した灯台を模した巨大構造物を、多くの人が力を合わせてロープで引っ張り起こしている。アーティスト自身の現地での体験がもとになって生まれたプロジェクトだ。
オノ・ヨーコ《色を加えるペインティング(難民船)》は、難民問題の解決を願ってつくられたもの。観客が作品の内部に入り込んで、そこに言葉を加えることができる。
世界中のつらい出来事を想起させる作品ばかりゆえ、観る側としては気分が落ち込む一方かと思えば、そうともかぎらない。どうあがいても訪れてしまうカタストロフに対して、どうしたら前を向けるか。希望をつなげるか。その処方箋を、それぞれの作品が必死に示そうとしているからだ。