じわじわと追い詰める「見えない赤字」
最初のうちは、特に問題ありませんでした。しかしそれから5年が経ち、現在65歳になった佐々木さんにとって、日々の生活費は想像していた以上に重くのしかかります。
年金は変わらず月11万4000円。退職金を切り崩しながら5年が経ってみると、日々老後の不安ばかりが強くなってきたのです。趣味の映画やジャズのコレクション費用、医療費、賃貸の更新費用なども重なり、想定以上に貯金は減っていきました。
60歳時点で2000万円あった貯蓄は、5年後には1200万円となり、この5年間で800万円を取り崩していた計算になりました。
賃貸の家賃は8万円。光熱費が2万円。食費は4万円と、その他雑費で3万円ほど。毎月約17万円がかかります。月5万6000円の赤字です。
サラリーマン時代のように、趣味のジャズアルバムや映画にお金を使っている余裕もありません。
「こんなはずじゃなかった……」
最初は節約で乗り切ろうとしました。外食をやめ、電気をこまめに消し、買い物も最低限に抑えました。しかしそれでも赤字は消えません。さらに追い打ちをかけたのが、物価上昇でした。スーパーでは、同じ商品が以前より明らかに高くなっています。電気代もガス代も、請求書を見るたびに増えていきました。
「こんなに上がるなんて聞いてないぞ……」
年金額は変わらないのに、支出は増え続ける。その差額は、全て貯金を切り崩して埋めるしかありません。そしてさらに、思わぬ出来事が佐々木さんを襲いました。
「働けない老後」でピンチ!
ある日佐々木さんは酔って自宅の玄関で転倒し、腰を強く打ってしまいました。酔っていたので、痛みを堪えながらもそのまま寝てしまいました。しかし夜中に激痛で目が覚め、自分で救急車を呼ぶことになったのです。
病院での診断は圧迫骨折。
「しばらくは安静にしてください。無理は禁物です」
医者の言葉に、佐々木さんは愕然としました。
