アメリカのトランプ大統領、イギリスで躍進する右派政党「リフォームUK」のファラージ党首。排外主義を推進し、一見歯切れは良いが嘘を連発する政治家に民衆の支持が集まってしまうという現象が、世界各国で起きている。
その背景をイギリス社会で長年移民として生活してきた視点から分析した、ブレイディみかこさんの新刊『それはどこでも起こり得る 壊れゆく世界への抵抗』(文藝春秋)が話題だ。
自身も約5年間、家族とロンドンで暮らした経験がある内田也哉子さんが、ブレイディさんの住むブライトンを訪問し、語り合った。『週刊文春WOMAN 2026秋号』より一部を抜粋・編集し掲載する。
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学力や能力以外の部分で差がつく“階級の天井”
内田 みかこさんが『それはどこでも起こり得る』で言及されている「クラス・シーリング(階級の天井)」という問題がありますよね。
ブレイディ 同じ大学の同じ学部を出ていても、労働者階級の出身者と中上流階級の出身者では所得に差があるという話です。なぜかというと、仮に同じ会社に就職したとしても、中上流階級出身の上司に引き立ててもらえるのは、やっぱり同じ階級出身の部下なんですね。たとえば上司からスキーに誘われたときに、労働者階級の出身者はスキーをやったことがないからと尻込みしたりしますし、生きてきた世界が違うので共通の話題も少ない。
学力や能力以外の部分で差がついてしまうわけなんです。貧しい環境からオックスフォード大学に入ったような話を聞くと、「それはドラマだね」と喝采するんですが、大抵そこでめでたしめでたしとはいかない。
内田 ヨーロッパは今、正規雇用で職を得るのが難しいですよね。階級の問題とはちょっと違いますが、私の娘も今、壁に直面しています。彼女はイギリスの高校を卒業後、ニューヨークの大学とパリの大学院で学んでから、フランスで働いているんですが、外国人がヨーロッパで生きる難しさをひしひしと感じているみたいです。
インターンシップはいろんな職場でできても、正規雇用となると本当に難しい。それでもやっと就職口を見つけて頑張っているんですけど。
ブレイディ 娘さんのように異なる人種、異なる階級を身をもって知っている人は、橋渡し役として、これからの世界ではとても重要な存在になると思います。
内田 異なる人種や階級を繋ぐために、エンターテインメントやスポーツ、アートの果たす役割は大きいと思うのですが、今のイギリスでは機能していないですか。
