「女性の休日」を実現させたアナキズムの思想
ブレイディ 「女性の休日」には、リベラル派から保守派まで、政治家やビジネスパーソンから専業主婦まで、あらゆる世代の、あらゆる立場の人が参加したんです。それが可能だったのは、熟議を尽くしたからでした。
当初、保守派の人たちは「ストライキなんてコミュニストのやることだ」って反対していたんですけど、「じゃあ『休日』って呼んだらどう?」と提案されて、考えを変えていった。早い段階で多数決を採ることをせず、とことん話し合ったから実現できたんですね。今回の本にも書きましたが、これはアナキズムの思想です。
内田 みかこさんの本を読んで痛感したのは、「私はアナキズムを誤解していたな」ということでした。アナキズムとかアナキストというと、なんかすごく過激なイメージを持っていたんですけど、そうじゃなくて、時間をかけて相手と話すことなんだなって。
ブレイディ アナキズムが国家や議会を否定するのは、それが勝ち負けの論理で動きがちだからです。多数決って勝ち負けの論理、いわば戦争の論理なんですね。
内田 そうですね。負けたほうの考え方は消されてしまう。
ブレイディ EU離脱を決めた2016年の国民投票をきっかけに、イギリス社会の分断は深刻化しました。だって、離脱か残留かって、極端な二択ですよね。100か0か。勝ちか負けか。負けたほうには怨恨が残ります。分断を乗り越えるためには、やっぱりアナキズムの思想が必要だって思うんです。
写真:Shu Tomioka
※子どもをイギリスの学校に通わせた内田さんとブレイディさんの学校教育についての考え方や、学校教育への社会情勢の影響が語られた記事全文は、『週刊文春WOMAN 2026秋号』で読むことができます。
Yayako Uchida
うちだややこ/1976年東京都生まれ。文筆家。幼少の頃より、東京・ニューヨーク・ジュネーブ・パリなどで学び、19歳で帰国。著書に『ペーパームービー』『会見記』『BLANK PAGE 空っぽを満たす旅』など。
Mikako Brady
ぶれいでぃみかこ/1965年福岡県生まれ。ライター、コラムニスト。96年から英国ブライトン在住。著書に『子どもたちの階級闘争』『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』『他者の靴を履く』など。

