こいつらがエッセイを書いたら終わりだ

渡辺 会場からのご質問も届いています。「自分の気持ちや思いを言葉にするのが苦手です。亜和さんのように自分の言葉で伝えられるようになるためのアドバイスはありますか?」という質問ですが、いかがでしょうか。

伊藤亜和さん、渡辺祐真さん ©佐藤亘/文藝春秋

伊藤 自分の気持ちを言葉にして口に出すのは、日常では私も本当にできないです。

渡辺 えっ、そうなんですか?

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伊藤 「嬉しい」「また遊ぼう」「ありがとう」のような、特にポジティブな感情ほど口が固まってしまって言えなくて。

渡辺 日常で言えていないから、逆にエッセイやPodcastだと口にできるのでしょうか。

伊藤 そうですね。日常で言えない代わりに書いているのだと思います。相手から自分に向けられる好意や興味、信頼といったものを背負えなくて、そういう感情を察知すると「あ、あ……」ってなっちゃうんです。「誰も私には興味がないな」「この人は私の本を読まないな」と思うと自分の言葉で書けますね。

渡辺 もう一つ質問です。「生成AIは使いますか?」

伊藤 執筆には使わないですね。「今後生成AIが進化していく中で、エッセイはどうなっていくと思いますか」と最近インタビューで訊かれた時に「エッセイの価値は、生身の人間が実際にそこにいて経験したことにある。AIに足が生えて人格を持ち、人間と同じように行動して経験を重ねない限り、人間が書くエッセイの価値はなくならないと思います」と答えたんです。

 ただ、最近中国で開催された「世界人型ロボット運動会」の映像を見たら、ロボットが普通に走っていて「うわ、もう足が生えてる! 体があるよ!」とショックを受けました(笑)。「こいつらがエッセイを書いたら終わりだ」と。

伊藤亜和さん、渡辺祐真さん ©佐藤亘/文藝春秋

渡辺 今僕らがAIについて訊かれて答えていることは、5年後、10年後には赤っ恥になっている可能性がありますね(笑)。

伊藤 本当ですね(笑)。

魔女になりたい

伊藤 亜和

文藝春秋

2026年8月27日 発売

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