かつて稼いだ金を湯水のように遣い、ブランド品の買い漁りやホストクラブでの豪遊に溺れた作家・中村うさぎ氏。

「宵越しの銭は持たねぇ!」と豪語し、貯金ゼロのまま放蕩三昧の日々を送っていたが、50代半ばで急病に倒れ生死をさまようことに。奇跡的に一命をとりとめたものの、待っていたのは「仕事の喪失」「脚の麻痺」、そして……。

 人気作家として一世を風靡した彼女が65歳のときに直面した危機とは? 新刊『老後破産の女王』(新潮社)より一部を抜粋して公開する。(全2回の1回目)

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ゾンビに扮したこの女性作家の正体は…(写真:本人SNSより)

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「アリとキリギリス」の話には、2種類の結末があるそうだ。夏の間遊び呆けていたキリギリスが冬になって蓄えもなく飢えてアリを訪ねたところ、アリが「自業自得さ」と冷たく追い返す、という結末が元々のオリジナル。だが後世、それではあまりにもキリギリスが気の毒で子供の教育に悪いということで改変され、落ちぶれたキリギリスをアリが寛容にも助けてやる結末も生まれたらしい。よかったね、キリギリス。

 だが、本当によかったのだろうか? 怠惰で計画性がなく遊んでばかりで身を滅ぼしたキリギリスを甘やかすのは、はたして社会的に正しいのか?

「宵越しの銭は持たねぇ!」

 たとえば、ここにひとりの女がいる。一応エッセイストとして生計を立ててはいるのだが、根っからの浪費家で、稼いだ金は湯水のように遣ってしまう。それも有意義なことには一切遣わず、やれブランド物だの高級ホテルだのホストクラブで豪遊だのと、泡沫のごとき享楽に溺れるだけの愚かな無駄遣いしかしない。当然、貯金など1円もなく、挙げ句の果てには税金を滞納したりサラ金に借金したりする始末。

 江戸っ子でもないくせに「宵越しの銭は持たねぇ!」と開き直り、「長生きするつもりないから、将来に備えてコツコツ貯めるなんてせこい真似をする気はないね!」などと嘯いて、なんだか意味不明に偉そうなのであった。まさに放蕩三昧のキリギリスである。

写真はイメージ ©AFLO

 ところが、驕れる者は久しからず。女は50代半ばで急な病に倒れ、生死をさまよった果てに息を吹き返したものの、後遺症で脚が不自由になったうえに仕事も失ってしまったのだった。

 言うまでもなく貯金など皆無であるし、こういう時のための保険にも一切入ってない。さぁ、困ったよ。仕事もなければ金もない状態で、明日からどうやって生きていけばいいのでしょうか。キリギリス女は途方に暮れた。が、特に名案も浮かばないので、そのまま放置することにした。