長年の浪費癖と病気による休筆がたたり、ついに夫から「もうお金がないよ」と告げられた作家・中村うさぎ氏。

 現実から目を逸らし続け、自身の収支すら把握していなかった彼女が恐る恐る確認した月の収入は、わずか「8万円」。それに対し、毎月の家賃だけで「20万円」という絶望的な大赤字だった。

 引っ越す資金すら残されていない絶体絶命のなか、一念発起して一般の就職先を探そうとするが……。新刊『老後破産の女王』(新潮社)より一部を抜粋して公開する。(全2回の2回目)

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ついにお金がなくなってしまった中村うさぎさんは…(写真:本人SNSより)

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どうしても直視したくない「ある現実」

「ごめんね。今まであんたに家計を任せきりで」

「それはいいの。あなたはお金のことが苦手だし」

「うん、でも、そうも言ってらんないから、私も考えなきゃ。えーと、とりあえず、今いくらくらい収入あるんだろ?」

 呆れたことにキリギリスは、自分の収入すら把握してないのだった。金のことを考えると脳がシステムダウンして魂がどこかに浮遊してしまうキリギリスは、これまで自分の収入はおろか生活費が毎月いくらかかっているのかさえ知ろうとしたことがない。

 それがこのうえなく卑怯な現実逃避であることは重々わかっているのだが、わかっていてもどうしようもないのである。金を遣う時に脳内に溢れかえる躁病的な快感がキリギリスを現実から切り離す一方で、いざ現実的な金の心配をしようとするとどす黒い鬱のもやが脳内に広がって何も見えなくなってしまう。

 この躁と鬱はセットなのだ。どちらもキリギリスが必死で現実を打ち消そうとして編み出した奇妙な戦略に他ならない。そこまでして視たくない現実とは何か?