自分はもう書き手として終わりなのかもしれないという不安に慄き、冷たい絶望が背中を這い上がって来るたびに、キリギリスは入院中に心肺停止したことを思い出し、「何故あの時に死んでしまわなかったのか」と歯ぎしりしながら悔しがるのだった。

現実なんてクソだ!

 ちくしょう、現実なんてクソだ! いつだって現実は私に容赦ない鞭を振るう。ああ、早く死にたい。こんな私に生きる価値などあるものか。たったひとつの特技であった文章すら書けなくなって、この先おめおめと生きながらえたところで何があるって言うの?

 そんな風に毎日毎日自分を呪い続けているばかりで、たとえば何か新しい技術を身につけようとか頑張って脳のリハビリをしてみようとか、そういった努力は何ひとつしようとしないのだから、キリギリスの書くものがどんどんダメになっていったのは当然であったし、読者が離れていくのも無理ないのであった。

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 すべて、キリギリスの自業自得だ。老後の資金がまったくないのも、収入が激減したのも、全部自分のせいである。世間のアリたちは一生懸命に働いてコツコツと金を貯め、老後もどうにか暮らせるようにと備えていたというのに、そんなアリたちをバカにして遊び呆けていたキリギリスは今、仕事も金もなく現実の寒さに骨の髄まで凍えているのだ。

「そ、そうか……」

 なんとか衝撃から立ち直ったキリギリスは、傍らの夫に恐る恐る囁いた。

「現時点で収入は月に8万円ってこと?」

「うん、まぁ、そんなもんね」

「それに対して生活費は……えっと、ここの家賃はいくらだっけ?」