「障害を売り物にするなよ」。パラスポーツを国内外で撮影し続ける写真家・越智貴雄さんは、義足の女性アスリートのセミヌードカレンダーを出したとき、近しい人からこう言われたという。だが、その写真は海外から火がつき、日本にも「逆輸入」される形で注目を集めた。

石川県で、地域活性化を目的に招かれ開催された「切断ヴィーナスショー」。中央は村上清加さん ©︎越智貴雄

「障害を売り物にするなよ」から「羨ましい」へ

 きっかけは2012年のロンドンパラリンピックの前、アスリート本人から「義足を買うお金がない」と相談されたことだった。2人でセミヌードを撮って出版したが、日本では最初、まったく相手にされなかった。

「プレスリリースを新聞社に7、8回送っても何の反応もなくて」と越智さんは振り返る。最初に1面で取り上げたのは夕刊フジだった。そこからAP通信、ロイター、AFP通信から「写真をくれ」と声がかかり、世界で注目が集まったという。

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 海外の反応は国ごとに異なった。イタリアで受けたのは、お尻や背中の筋肉がよく見えるヴィーナス像のような写真。イギリスでは、前から撮った迫力のある強そうな写真だった。越智さんは「美の基準自体も、時と場所によって全然違うんだな」と実感した。

 その経験から、「今はたまたま、日本の人は義足のかっこよさを知らないだけだ」と確信を持てたという。2014年には義足の女性たちに焦点を当てた写真集『切断ヴィーナス』を出版した。タイトルは、義肢装具士の臼井二美男さんの「女性はみんなヴィーナスだ」という言葉から生まれた。最初は「不謹慎だ」といった声もあったが、「自分が震えるもの、それを伝えていけばいい」と気にしなかった。

 撮影では、構図を自分で決めず、自らを「プリクラ」と位置づけた。撮影よりもヒアリングに時間をかけ、「私、チーターになりたい」といった要望に応えていった。現場は「学生のときの文化祭のノリ」だったという。

 反響のなかで最もうれしかったのは、「障害者なのに頑張ってるね」ではなく、「羨ましい」という声だった。「よし、大丈夫だ。自分の感じていたことは間違いなかった」と越智さんは語る。

 インタビューでは、ほかにも、涙を流しながらシャッターを切ったパラリンピックでの経験や、パラスポーツを取り巻く環境の変化、日本の課題についても語っている。

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