パラスポーツを国内外で撮影し続けている写真家・越智貴雄さん。
2014年には義足の女性たちにフォーカスした写真集『切断ヴィーナス』を出版し、その後、義足の女性たちのファッションショーも開催している。そんな彼にパラリンピックを撮影し始めたきっかけやパラスポーツに対する社会の変化、日本と海外の視点の違いなどについて話を聞いた。
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「障害を売り物にするなよ」と言われたセミヌードカレンダー
――『切断ヴィーナス』を出版される前には、義足の女性アスリートのセミヌードカレンダーを撮影されていますね。
越智 2012年のロンドンパラリンピックの前にアスリート本人から義足を買うお金がないと相談されて、2人でどうしようかっていうことで、セミヌードを撮って出版したんです。
最初日本ではまったく相手にされなかった。知り合いのカメラマンに「こんなん出したんだけど」って言ったんですけど全然だめで。「お前、障害を売り物にするなよ」と近しい人たちに言われて、うわーと思いました。
――いい反応がなかった。
越智 プレスリリースを新聞社に7、8回送っても何の反応もなくて。めっちゃいいのできてるのになと思ったんですけど。
一番最初に取り上げてくれたのが夕刊フジさんで、1面で取り上げてくれたんです。そこからAP通信やロイター、AFP通信から「写真をくれ」って言われて、世界ですごく注目が集まって、結果的に逆輸入みたいな形で日本でも注目を浴びることになりました。
美の基準自体も、時と場所によって全然違う
――海外ではどんな評価だったのですか。
越智 これが面白いんです。海外で、例えばイタリアでむちゃくちゃ受けたのは、お尻や背中の筋肉がよく見えるヴィーナス像のような写真。一方、イギリスでは前から撮った迫力のある強そうな写真。フランスやアメリカもまた違う。国によって、はっきりと好まれる写真が違ったんです。
――美の基準が違うのですね。
越智 そのときに、やっぱり美の基準自体も、時と場所によって全然違うんだなと。日本の場合は「時」だけと言ってもいいかもしれない。最初はまったく相手にされなかったわけですから。
リリースした当初は寄付を募るというのが嫌で言わなかったんですけど、実際にお金がなかったからやったことなので、それをちゃんと発信したりして。そうした中で、朝日新聞も社会面で取り上げてくれたりして、各テレビ局や雑誌が関心を持ってくれたんです。
――その経験が『切断ヴィーナス』につながっていく。
越智 その経験があったから、自分の中ではっきりしていたんです。「今はたまたま、日本の人は義足のかっこよさを知らないだけだ」と。
でも『セミヌードカレンダー』、『切断ヴィーナス』を出した時は「義足が羨ましい」っていう反響が結構あったんです。あるプロのモデルさんが「義足かっこいい。羨ましいな」ってSNSでつぶやいてくれたりして。日本でいうと、その反応が一番大きかったですね。
「障害者なのに頑張ってるね」「足がないのにえらいね」とか、よくある反応じゃなくて、「羨ましい」。そのときに、「よし、大丈夫だ。自分の感じていたことは間違いなかった」と。僕自身も、オリンピックに出ていたオスカー・ピストリウス選手とかを見て、羨ましいなって思うところがあったので、同じことがちゃんと伝わったんだ、と思いましたね。


